2023 Fiscal Year Research-status Report
海浜性ゾウムシにおける構造色の局所的喪失が生み出す斑紋多型の遺伝的制御基板の解明
Project/Area Number |
23K19450
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
荒木 祥文 京都大学, 農学研究科, 特定研究員 (70986603)
|
Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
Keywords | Structural coloration / Polymorphism / QTL analysis / RNA interference |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の体色は多様性に富んでおり、色素化合物による呈色と、微細立体構造による構造色の組み合わせによってもたらされている。しかし、色素化合物による着色の分子的基盤については多くの知見が蓄積しつつある一方、構造色発色制御の分子的基盤についてはほとんど明らかになっておらず、構造色に基づく体色の進化史や多様性の創出機構の解明は進んでいない。申請者らの研究グループは、海浜性ゾウムシの一種であるスナムグリヒョウタンゾウムシScepticus tigrinusの体色が、体表のフォトニック結晶構造が呈する構造色に由来する白色と、ワックスの浸潤による結晶内の屈折率の調節により生じる黒色の組合せによって制御されていることを見出した。そこで申請者は、量的遺伝子座解析および遺伝子発現量比較解析による構造色制御に関与している可能性の高い候補遺伝子の同定、およびRNA干渉法による遺伝子機能解析により、構造色による発色を操作しているワックスの分泌を制御する遺伝子を決定し、これまで未報告の構造色の制御機構の分子基盤を明らかにすることを目的に、本研究を開始した。 令和5年度は、野生集団より採集した個体から研究の基盤となる各色彩型の純系系統、および色彩型間の交雑系統の作出を行うため、研究グループが独自に開発した人工飼料による飼育系による累代飼育を行った。その結果、親世代となるG0世代、およびその交配による純系第1世代、交雑F1世代の作出に成功した。飼育系の詳細と課題については未公表であったため、当該年度の実施成績も合わせ、学会においてポスター発表形式で公表を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和5年度末から令和6年度初頭には交雑F2世代を確保し、ゲノム抽出および解析を開始できる見込みであったが、 ①幼虫期の成長速度や性成熟までの期間の個体差が非常に大きく、不安定であること ②24年1月から3月にかけて、純系第1世代と雑種F1世代が繁殖行動を中断し、当該期間の累代が停止したこと ③幼虫期の死亡率が想定を上回っており、成熟成虫の再生産が予想通り進んでいないこと などの諸条件が重複し、目標の世代の作出および必要十分な個体数の確保に至っていないため、ゲノム解析が予定通り開始できていない。
|
Strategy for Future Research Activity |
生植物を用いた従来型の飼育系による純系系統の累代および交雑F1・F2世代の作出を並行して試み、必要十分な数の検体を改めて確保する。令和6年度初頭に予定していたQTL解析および遺伝子発現量比較解析については、やや予定を遅らせて年度中頃を目途に実施する。また、未公表のままとなっていたスナムグリヒョウタンゾウムの参照ゲノムについて、新規に複数のライフステージよりRNA-seqによる転写産物の配列を決定して詳細な遺伝子アノテーションを行い、その結果を近縁種及び他の甲虫類との比較を行ったうえで年度内に論文化し、公表することを計画している。
|
Causes of Carryover |
研究計画に遅れが生じ、予定していた次世代シーケンシング向けのゲノム抽出等を行うめどが立たなかったことから、令和5年度中に予定していた分子実験用試薬等の購入を翌年度に実施することとした。令和6年度には計画していた分子実験を実施できる見込みであるため、当該実験実施のための試薬購入やシーケンシングの外注などには前年度分の助成金を充てることを予定している。
|
Research Products
(1 results)