2023 Fiscal Year Research-status Report
ケミカルバイオロジーによる濾胞性制御性T細胞分化誘導メカニズム解明
Project/Area Number |
23K19472
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加藤 美樹 慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 研究員 (00979479)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | Tfr細胞 / ケミカルバイオロジー / Foxp3 / Bcl-6 / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、独自の評価系を用いて既知化合物や天然物抽出物から濾胞制御性 T 細胞 (follicular regulatory T cells: TFR細胞)の分化誘導標的分子を探索し、ケミカルバイオロジーの手法を用いてTFR細胞分化に関わる標的タンパク質を特定することである。この研究によりTFR 細胞の分化機序の解明を目指す。既知化合物として標準阻害剤キット約 400 化合物を、天然物抽出物は約500種ある放線菌抽出物ライブラリーを用いる。 2023年度の研究内容は以下のとおりである。一次スクリーニングではFoxp3-EGFPとBcl-6-tdTomatoのダブルレポーターマウスの脾臓からナイーブT細胞を単離し、96ウェル上でiTFR細胞分化誘導条件下にて培養する際に阻害剤または放線菌抽出物を添加した。同時に生細胞を同定するのに必要な蛍光色素で染色した。5日間の培養後に、EGFPのシグナルとtdTomatoのシグナルを指標として生細胞中のFoxp3とBcl-6を発現する細胞数やその発現量を計測し、発現量を増減させる化合物を定性的に選定した。二次スクリーニングではTCF-7-EGFPレポーターマウスを用いて、一次スクリーニングと同様に培養し、TCF-7およびCXCR5の発現量を評価した。一次、二次スクリーニングにより、阻害剤から15種類、放線菌抽出物から5種類が選定され、放線菌抽出物についてはさらにフローサイトメトリを用いて定量的に評価を行い1種類に絞り込こんだ。この抽出物をカラムクロマトグラフィーにより分画して単離し、NMRと質量分析計により活性成分の構造を決定した。この化合物はTh1細胞及びTh17細胞の分化誘導評価により、これらのT細胞も分化誘導する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
放線菌抽出物からの候補化合物の構造決定を先行して実施したため、標準阻害剤スクリーニングの三次スクリーニングに遅延が生じた。しかし、二次スクリーニングですでに15種類まで絞り込めているため、遅延は問題ない範囲と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
標準阻害剤の三次スクリーニングを進めるとともに、放線菌抽出物からの化合物の作用機序の解明を行う。さらに炎症モデルマウスを用いた評価も実施する。作用機序の解明には、RNA-seqを実施し、標的タンパク質の候補を選定する。標的タンパク質に対しCRISPR/Cas9システムによるノックアウト、もしくは強制発現させ、TFR細胞の分化や機能に与える影響を、フローサイトメトリーやトランスクリプトーム解析を用いて評価する。標準阻害剤ライブラリーから見出した標的タンパク質についても同様に評価を実施する。 炎症モデルマウスによる評価として、関節炎リウマチを想定したコラーゲン誘発性関節炎モデルでの炎症低減活性、シェーグレン症候群を想定したマウス唾液腺損傷低減活性評価法を実施する予定である。
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