2023 Fiscal Year Research-status Report
NAD+合成経路に着目した先天性奇形や不育症の診断・予防法の開発
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23K19473
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
生野 彰宏 藤田医科大学, 医療科学部, 助教 (10981946)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | キヌレニン経路 / トリプトファン / キノリネートホスホリボシルトランスフェラーゼ / 細胞内エネルギー代謝 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、QPRT欠損マウスにおける胎児の発育障害と細胞老化の関連およびそのメカニズムを明らかにすることである。そこでQPRT欠損マウスまたはその交雑からのマウス胚線維芽細胞(MEF)を用いて、昨年度は具体的に次のように研究を進めた。 ①QPRT欠損と早期細胞老化の関連とその特徴を明らかにする。 QPRT欠損マウス由来MEFを用いて、老化表現型を解析するため、老化関連-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)活性の顕微鏡画像解析、老化経路に関連する遺伝子および老化関連分泌表現型(SASP)遺伝子に対してq-PCR法による発現解析を行った。結果として、QPRTヘテロ欠損マウスにおいて、野生型と比較して早期にSA-β-gal活性が上昇することを明らかにし、欠損マウスやにおいても検討を進めている。しかしながらSASP遺伝子に関しては特徴的な発現変化を見つけられておらず、検討を進める。 ②QPRT欠損がミトコンドリア機能に与える影響を明らかにする。 ATP産生や呼吸基質の利用率などのミトコンドリア機能におけるQPRTの役割を明らかにするため、QPRT欠損マウス由来MEFをセルフラックスアナライザーにより解析し、QPRT欠損マウス由来MEFではミトコンドリア最大呼吸能が低下することを明らかにした。また免疫蛍光染色法を用いた、QPRTの細胞内局在の変化、およびミトコンドリア機能との関連を解析することを試みた。しかしながら最適な抗QPRT抗体および染色条件の決定に至らず、この解析について現在は困難であると判断した
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①QPRT欠損と早期細胞老化の関連とその特徴を明らかにする:QPRT欠損マウス由来MEFを用いた老化表現型の解析については、老化関連β-ガラクトシダーゼ(SA-β-gal)活性の顕微鏡画像解析、老化経路に関連する遺伝子および老化関連分泌表現型(SASP)遺伝子に対してq-PCR法による発現解析については計画から大きく遅れることなく結果を得られている。ウエスタンブロットを用いたタンパク質レベルでの解析は本年度も引き続き進める予定である。RNAシーケンス解析は最適な培養期間を決定する予定だったが、MEFの採集Lot間の誤差も存在し現状難航している。最後に、免疫蛍光染色法を用いた、QPRTの細胞内局在、およびミトコンドリア機能との関連解析は、最適な抗QPRT抗体および染色条件の決定に至っておらず検討が困難であると判断した。 ②QPRT欠損がミトコンドリア機能に与える影響を明らかにする:ATP産生や呼吸基質の利用率などのミトコンドリア機能におけるQPRTの役割を明らかにするため、QPRT欠損マウス由来MEFをセルフラックスアナライザーにより解析し、QPRT欠損マウス由来MEFではミトコンドリア最大呼吸能が低下することを明らかにした。現在はNAD+前駆体の添加によるレスキュー実験の準備を進めている。 ③NAD+前駆体投与によりQPRT欠損マウスの発育障害が改善されるかを明らかにする:妊娠させたQPRT欠損マウスにNAD+前駆体であるニコチン酸を飲水摂取させ、生まれる仔の数が改善するかの評価に昨年度中に着手することを予定していた。しかしながら前述の解析にMEFが多く必要となったこと、そもそもの出生確率が低いことから、予想以上に欠損マウスの取得が困難であったため、着手が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は以下のとおりである。 ①QPRT欠損と早期細胞老化の関連とその特徴を明らかにする。 まず遺伝子発現の網羅的な解析のためRNAシーケンス解析を予定していたが、最適な培養期間を決定に至っておらず、現在着手出来ない状況である。これについては昨年度に解析可能となった他の老化表現型解析結果を精査し、これを元に基準を再考し検討を進めたいと考えている。次に、免疫蛍光染色法を用いた、QPRTの細胞内局在、およびミトコンドリア機能との関連解析は、最適な抗QPRT抗体および染色条件の決定に至っておらず、特に抗体の特異性に問題があることから現在は検討が困難であると判断している。 ③NAD+前駆体投与によりQPRT欠損マウスの発育障害が改善されるかを明らかにする。 妊娠させたQPRT欠損マウスにNAD+前駆体であるニコチン酸を飲水摂取させ、生まれる仔の数が改善するかの評価に昨年度中に着手することを予定していた。しかしながら前述の解析にMEFが多く必要となったこと、そもそもの出生確率が低いことから、予想以上に欠損マウスの取得が困難であったため、着手が遅れている。本年度は昨年度の検討の結果から他の解析に必要なMEFの数も少なくなってきており、昨年度よりも本検討に利用できる妊娠マウスを得やすく、これによって検討を進められると考えている。
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Causes of Carryover |
本研究課題の進捗状況に示したように、大きく予算を計画していたRNAシークエンス解析が進められていないことなど、計画にやや遅れがあるためである。しかしながら計算以上に費用が必要であった検討もあり、昨年度の残額を本年度使用したいと考えている。
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