2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of mechanisms for conversion of adipocytes to cancer-associated fibroblasts in osteosarcoma microenvironment
Project/Area Number |
23K19518
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
上瀧 萌 藤田医科大学, 腫瘍医学研究センター, 研究員 (60976869)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 腫瘍微小環境 / がん関連線維芽細胞 / 脂肪細胞 / がん微小環境 / 腫瘍関連線維芽細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
がんの微小環境は、がん細胞のみならず脂肪細胞や線維芽細胞といった種々の細胞集団で構成され、特にがん関連線維芽細胞(CAF)は様々な炎症性サイトカインや増殖因子などを分泌することで、がん細胞の増殖、浸潤及び転移、治療抵抗性に影響を及ぼすと考えられている。線維芽細胞、間葉系幹細胞、さらには脂肪細胞がCAFの起源となることが明らかにされつつあるが、それら起源細胞からCAFへの転換を制御する分子メカニズムは未解明のままである。これまでに研究代表者らは高悪性度の骨肉腫細胞株AXT由来の培養上清(AXT-CM)を脂肪細胞に添加すると、転写調節因子MKL1が活性化し、それによって脂肪細胞-CAF転換が誘導されることを見出した。令和5年度では、脂肪細胞lineage tracingマウス(Adipoq-Cre/ROSA-LacZマウス)を用いてAXT細胞を皮下脂肪内に移植したところ、腫瘍の進展とともに脂肪組織がリモデリングされ、組織の線維化が誘導された。さらに腫瘍細胞周辺の一部の脂肪細胞が脱分化し、αSMA陽性のCAF様細胞へと転換することを見出した。また、AXT-CM、低悪性度の骨肉腫細胞株AO由来の培養上清(AO-CM)あるいはコントロール培地で処理した脂肪細胞のマイクロアレイ解析を行い、Gene set enrichment analysis (GSEA)により機能解析を実施した。その結果、AXT-CMを処理した脂肪細胞(AXT-Ad)では、『脂肪分化』及び『脂肪代謝』に関連する遺伝子セットの発現が有意に減少し、一方で『Myofibroblast』に関連する遺伝子セットが高発現することが分かった。以上の結果から、AXT細胞から分泌される液性因子が脂肪細胞でMKL1を活性化するとともに、脱脂肪化およびCAF転換を誘導することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度において、移植後定着した高悪性度の骨肉腫細胞が脂肪組織の線維化を誘導し、微小環境をリモデリングすることを明らかにした。さらに悪性骨肉腫細胞周辺の脂肪細胞がαSMA陽性細胞へ転換することも見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度までに、腫瘍細胞から分泌される液性因子が、腫瘍周辺の脂肪細胞の脱分化を誘導し、CAF様細胞へと分化転換を誘導することを見出したので、それらの現象がMKL1活性化により引き起こされるか否かについて検討する。また、脂肪細胞由来のCAF様細胞が骨肉腫細胞に及ぼす影響を明らかにする目的で、AXT細胞あるいはAO細胞とCAF様細胞の共培養を実施する。
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Causes of Carryover |
マウスへの移植に必要なAO細胞の細胞数および解剖までの期間の予備検討を実施したが、うまく腫瘍が生着せず解析できなかったため、当初計画していた本年度の実験物品に必要な費用を全額使用するに至らなかった。これに伴い、予定していた学会発表に至らず、次年度に延期することとした。したがって、次年度の研究計画を遂行するため、研究費を繰越し、実験試薬の購入、学会発表などの費用として充当する。
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