2023 Fiscal Year Research-status Report
陽子線治療における呼吸性移動疾患の4次元線量計算分布の見える化
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23K19590
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
冨永 裕樹 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (80978370)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 陽子線 / 治療計画 / 放射線治療 / 粒子線治療 / 呼吸性移動 / 相互作用 / 線量計算 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、呼吸性移動を持つ疾患に対する陽子線スキャニング法において、ビーム照射に時間モデルを正確に計算し、呼吸によって変化する実際の線量分布を可視化することを目指した。その中で特に以下の点について検証を行った。
1.呼吸性移動疾患の相互作用を計算し、実際の線量分布として可視化するためには、ビームの照射に時間軸を付与し、呼吸性移動の周期(呼吸の速さ)と振幅(腫瘍の移動量)の変化に合わせて、異なる位置に腫瘍が存在するCT画像にそれぞれ計算する必要がある。患者の呼吸は一定の正弦波のような動きではなく、周期と振幅の複雑な変化を伴う。周期の変化に対応できる線量計算モデルは前年度に開発済みであり、2023年度はファントムを用いて計算と測定の一致度の検証を行った。従来法の検証結果は国内で複数回学会発表を行い、3本の英語論文として発表を行うことができた。2024年度は、従来法による未発表の結果について英語発表も予定している。 2.振幅の変化に対応するためには、想定する腫瘍位置からどれだけ変動があったかを計算し、振幅ずれ量としてそれを計算上に反映させる必要がある。2023年度の研究にて、そのモデルを開発することができた。これより、新たなモデルを用いた可視化計算が従来法と比べて、精度が改善しているかを検証する必要がある。すでに取得済みの測定データのみでは詳細な評価が行えない可能性があるため、購入したラジオクロミックフィルムを用いて追加検証を行い、得られた結果をまとめて国内外の学会や英語論文で発表する予定である。 新たな可視化モデルを完成させることによって、呼吸の(1)周期(速さ)と(2)振幅(腫瘍の位置、移動量)の両方の変化を正確に計算することができ、呼吸性移動疾患の陽子線治療の再発や有害事象リスクを少なくすることが可能である。以上のテーマを並行して進めており、進捗状況は順調である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究費取得初年度は、すでに開発済みであった振幅変化のみを対象とした呼吸性移動による体内線量分布の変化の見える化を検証した。並行して、従来の計算モデルによって得られた知見を論文発表にて3件行ってきた。これらの結果から、従来法による呼吸性移動の見える化の知見は学術的に認められたため、研究は順調に推移していると考える。
さらに、ここから新たな計算モデルとして振幅の変化に対応する計算モデルを開発し、代表的な照射のみの検証を行い、計算精度の正確性を評価した。計算モデルに関する紹介を海外学会で次年度に発表予定である。これらの結果をまとめて、査読付きの英語論文雑誌へ投稿を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は以下の2点を推進していく。 1.周期と振幅変化に対応した新たな計算モデルの開発は完了したため、すでに取得したデータについて再計算を行い、従来法との比較検証を行う。従来法と新たな方法の両方で計算と測定が一致しないものについて、両者を組み合わせた方法を試し、計算精度がどの程度改善するかを調査する。
2.複雑な振幅変化を想定した検証は、再測定が必要な場合が存在すると考えるため、その場合は消耗品であるラジオクロミックフィルムを追加購入する可能性がある。本研究で得られた知見を海外および国内の学会で1回ずつ発表予定である。さらに、これまでの検証データをまとめ、査読付き英語論文雑誌を投稿予定である。
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