2023 Fiscal Year Research-status Report
Diet-microbe interaction in the pathogenesis of Crohn's disease
Project/Area Number |
23K19616
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
杉原 康平 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 助教 (50981883)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | クローン病 / 腸内細菌 / 接着性侵入性大腸菌 / 栄養ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
腸内細菌はクローン病の病態で重要な役割を果たしており、特に病原性細菌の増加がクローン病の発症に大きく関わっている。クローン病の病原性細菌は、炎症環境に適応した代謝変化に加え、共生細菌との栄養ネットワークを形成することにより増加するが、この栄養ネットワークの機序は不明な点が多い。そこで本研究は、病原性細菌によるクローン病の病態形成機構を解明することを目的に、共生細菌と病原性細菌の栄養ネットワーク機構の解明を試みた。 初年度は、クローン病の病原性細菌である接着性侵入性大腸菌(AIEC)とムチン分解細菌の代謝的相互作用に着目した。ムチン分解細菌(Akkermansia muciniphila、Ruminococcus gnavus)存在下でのAIECの遺伝子発現を網羅的に検証した結果、ムチン分解細菌存在下ではAIECのエタノールアミン代謝関連遺伝子が有意に上昇したことが示された。大腸菌では、eutオペロンでエタノールアミン代謝が制御されているため、エタノールアミンを利用できないAIEC-eutR変異株を作製した。このAIEC-eutR変異株は、エタノールアミン添加最少培地下ではWTに比べ増殖が低下することが示され、エタノールアミンが利用できないことを確認した。さらに、マウスにおける感染実験において、エタノールアミンを利用できないAIEC変異株は、ムチン分解細菌存在下での増殖優位性を得られないことが示された。以上より、AIECとムチン分解細菌の栄養ネットワークにおいてエタノールアミンが重要な役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、AIECとムチン分解細菌の栄養ネットワークの鍵となる遺伝子の同定を試み、エタノールアミンがこの栄養ネットワークに重要であることが示された。さらに、AIECのエタノールアミン代謝はムチン分解細菌存在下での増殖優位性を獲得するために必要であることを明らかにしたため、実験は概ね順調であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度でAIECとムチン分解細菌の栄養ネットワーク機構のメカニズムを明らかにした。次年度は、食事の変化によるムチン分解細菌の優勢環境下がAIECの定着・増殖に影響するか評価する。また、このAIECの定着・増殖の変化がAIECのエタノールアミン代謝依存的かどうか検討する。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬の納期が遅れ年度末に納品できなかったため、次年度使用額が生じた。必要試薬は繰越予算で2024年度に購入し、予定通り実験計画を実行する。
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