2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌細胞の悪性度の低い形質を誘導する腫瘍抑制性のCAFの研究
Project/Area Number |
23K19636
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
新川 智彦 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40982319)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 膵癌 / 腫瘍抑制 / 癌関連繊維芽細胞 / CAF / 腫瘍微小環境 / 不均一性 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は腫瘍微小環境において、癌細胞・癌関連線維芽細胞(CAF)の双方において高度な不均一性を持ち、そのために予後不良となることが知られている。我々はこれまで癌細胞の可塑性に着目し、CAFの分泌するニッチ因子が比較的悪性度の低い高分化型、classical typeの表現型を維持することを明らかにしてきた。一方、近年CAFにも多様性があることが知られてきており、どのようなCAF(腫瘍抑制性CAF)がどのようにして癌の悪性度の低い形質を維持するのか、その機序を明らかにすることを目的とした。 今年度は、ヒト膵癌のパブリックデータのシングルセルRNA解析を行った。その結果、前回の検討で明らかにしたニッチ因子の発現が最も高いCAFクラスターは、ADH1Bという遺伝子の発現が高い、比較的正常に近いCAF群であることが明らかになった。このCAF群は、細胞外マトリクス産生や血管新生、細胞増殖に関与するパスウェイの上昇を認めた。このことから、細胞外マトリクス関連の遺伝子群の発現の詳細を検討したところ、FBLN、COL4、COL15などの線維産生の遺伝子やLTBP、IGFBP、OGNなどのTGFβと協調して細胞外マトリクス産生に関与する遺伝子群の上昇を認めた。続いて、ヒトの膵癌オルガノイドのうち中間型で可塑性を有するものをCAFと共移植した。その結果、高分化型の構造の維持には細胞外基質が重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シングルセルRNA解析を用いて、網羅的検索により、腫瘍抑制性CAFの特徴を明らかにすることができた。また、高分化型の維持には細胞外基質が重要である可能性まで同定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
腫瘍抑制性CAFの特徴として一部の細胞外基質の産生が亢進していることを同定し、またvivoの結果からも高分化型の維持には細胞外気質が重要であることが示唆された。今後はこれらの結果をもとに、どのような細胞外気質が高分化型の維持に重要であるか具体的に同定するとともに、CAF、癌細胞と細胞外基質および先に同定していたニッチ因子との相互作用について検討していく。
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Causes of Carryover |
研究計画はおおむね順調に進展しており、資金を有効に使用できたため。次年度は研究用試薬、抗体、シングルセル受託解析の費用に使用予定である。
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