2023 Fiscal Year Research-status Report
歯の移動に対する一酸化窒素を介したテトラヒドロビオプテリンの作用と有効性の検討
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23K19730
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
チャールストンコード 祐 日本大学, 歯学部, 専修医 (90979030)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 破骨細胞分化 / テトラヒドロビオプテリン |
Outline of Annual Research Achievements |
歯列矯正の圧迫側の歯周組織では,一酸化窒素(NO)が機 械的刺激のメディエーターとして破骨細胞の分化や活性を調節するが,破骨細胞分化に対するNOの効果は一貫性がなく,NOの効果を決定する機構の解明が必要である。一般的にNOは情報伝達物質として重要な役割を果たすが,活性NO分子種となった場合には細胞毒性を示す。一酸化窒素合成酵素(NOS)の補因子であるテトラヒドロビオプテリン(BH4)がNOの二面的な生理作用を調節することから,破骨細胞分化へのNOの効果を決定する因子がBH4であると考え,本研究では,BH4がNOを介して破骨細胞分化を促進するかどうかを検討する。申請者は,マウスマクロファージ由来Raw264.7細胞のNF-kB受容体リガンド(RANKL)誘導性の破骨細胞分化を促進するかどうかを検討した。まず,Raw細胞にRANKLと同時に様々な濃度のBH4を添加し4日間培養した。その後,TRAP染色により3核以上の巨細胞を破骨細胞として計数したところ,BH4の濃度に依存して破骨細胞数が増加した。また,細胞内のBH4量をHPLC-蛍光検出で測定したところ,添加したBH4濃度依存的に細胞内のBH4量が増加した。これらの結果は,細胞内BH4の上昇が破骨細胞数を増加させたことを示唆した。さらに,破骨細胞分化に関連する転写因子の遺伝子発現をリアルタイムPCRで検討したところ,破骨細胞分化のマスター遺伝子である核内T細胞活性化因子(NFATc1)を含むいくつかの転写因子の発現がBH4添加によって亢進した。現在は,破骨細胞分化時のBH4添加がNO産生に与える影響を検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
BH4の効果にNOが関与しているかどうかを観察するために,Griess法によって分化培地中のNO量を測定する予定であったが,Griess法のNO検出感度が低かったため,NO測定方法を検討しなければならなかった。測定方法を決定するための検討に時間がかかったため進捗状況が予定よりもやや遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
BH4の破骨細胞分化への促進効果がNOSの反応を介して起こるかどうかを検討するために,NOS阻害剤感受性の検討とNOS遺伝子のノックダウンがどのような影響を与えるのか観察する。つまり,BH4による効果が,NOS阻害剤(7-NI,L-NMMA,L-NIL,L-NIO)によって抑制されるかどうかを観察する。また, NOS遺伝子発現をsiRNAでノックダウンさせたRaw264.7細胞でBH4増加の破骨細胞分化への影響を観察する。さらに,細胞内BH4増加が破骨細胞分化を促進することを確かめるために,BH4欠乏が破骨細胞分化に与える影響を検討する。つまり,BH4生合成を律速するグアノシン三リン酸シクロヒドロラーゼI発現を siRNAでノックダウンさせたRaw細胞を用いて破骨細胞分化を検討する。また,BH4欠乏マウス(hph-1)とその対照群の骨髄由来マクロファージ(BMM)を採取し,それぞれ破骨細胞に分化させ,破骨細胞分化,NO産生,およびBH4量をそれぞれ比較する。
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Causes of Carryover |
BH4効果とNOS活性の関連を観察する実験を2024年度に変更したために,実験に必要なNOS阻害剤とsiRNA関連試薬を購入しなかったため使用差額が生じた。
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