2023 Fiscal Year Research-status Report
食品成分による腸セロトニン制御を起点とした腸-脳相関の検証
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23K19891
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
亀井 優輝 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (50979713)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | セロトニン / 腸-脳相関 / 機能性食品 / カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は①細胞の培養上清中のセロトニン測定法の確立と、②細胞レベルで末梢セロトニンの分泌を促進する食品成分の探索を行なった。 ① 消化管でのセロトニン分泌に関わるエンテロクロマフィン細胞株が入手できないため、セロトニン分泌能が高いヒト膵臓由来QGP-1細胞を代用した。本細胞の培養上清を用いて、セロトニンを測定するHPLC-蛍光検出法を確立した。また、セロトニンはTRPチャネルを介した細胞内へのカルシウムイオン流入によって分泌が促進されることが知られている。そこで、TRPA1のアゴニストであるシンナムアルデヒドをポジティブコントロールとして用いた結果、5分間の添加処理により、用量依存的にセロトニン分泌を亢進させることを確認した。 ② 食品成分のスクリーニングを行なった結果、セロトニン分泌を促進する食品成分を新たに同定した。この食品成分はシンナムアルデヒドよりも低い濃度にて、細胞毒性を生じさせることなくセロトニン分泌を亢進させることを見出した。さらにTRPチャネルの関与を調べるため、TRPA1阻害剤であるHC-030031やTRPV1阻害剤であるcapsazepineを用いた結果、シンナムアルデヒドによるセロトニン分泌はこれらの阻害剤の影響を受ける一方、新たに同定した食品成分はこれらの影響を受けないことが分かった。 本研究により、セロトニン分泌を促進する新たな食品因子を見出した。本研究成果は消化管セロトニンの新たな生理機能の発見や、セロトニンの制御法の開発につながるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、HPLC-蛍光検出法によるセロトニン測定法を確立し、細胞レベルでセロトニン分泌を促進する食品成分を同定できた。新たに同定した食品成分の作用点はまだ明らかにできていないが、作用点が既に明らかにされているシンナムアルデヒドによる5-HT分泌促進効果も確認できた。 以上の理由から、消化管セロトニン過剰の動物モデルを作製する準備ができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
セロトニン分泌促進効果を確認できた食品成分を用いて、消化管セロトニン過剰の動物モデルの作製を試みる。各食品成分を単独また複数組み合わせて経口投与し、消化管からのセロトニン分泌および血漿中のセロトニン濃度上昇を経時的に調べる。また、これらの食品成分を数日間投与し、慢性的にセロトニンを分泌させられる条件を確立する。細胞の培養上清サンプルと比べて、生体サンプルは夾雑物の影響が大きいと考えられるため、HPLCにおけるピークの分離が困難な場合は蛍光検出法から電気化学検出法へと切り替える。 消化管セロトニン過剰の動物モデルが確立でき次第、この動物モデルの脳内および消化管でのセロトニン代謝をメタボローム解析およびウエスタンブロッティング法にて調べる。また、精神機能の解析を行うため、うつ・不安様行動を調べる複数の行動試験を実施する。 さらに上記の動物試験と並行して、新たに同定した食品成分の作用点を明らかにする。まずは細胞内カルシウムイオン濃度の動態を確かめ、続いて関与するカルシウムチャネルの同定を試みる。
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Causes of Carryover |
食品成分の同定が迅速に完了した場合に予定していた動物実験を実施しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は動物実験を行うため、翌年度分の研究費と合わせて実験動物や飼料、床敷き等の購入や、その他当初の計画通りセロトニン代謝や行動試験を行うために使用する予定である。
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