2023 Fiscal Year Research-status Report
共生体育に向けた合理的配慮をめぐる建設的対話のあり方
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23K19906
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Research Institution | Biwako Seikei Sport College |
Principal Investigator |
中道 莉央 びわこ成蹊スポーツ大学, スポーツ学部, 准教授 (30550694)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 意思表明 / 合意形成 / インクルーシブ体育 / アダプテーション・ゲーム |
Outline of Annual Research Achievements |
「共生体育の実現に向けて、体育授業における合理的配慮(RA)をめぐる建設的対話(対話)のあり方を提案すること」を目的とし、2023年度は「RAの事例データベース等を活用し、適切な対話が行われるために必要な事項や考え方を整理すること」を課題とした。具体的には次項「現在までの進捗状況」に示す7つのデータベースを対象とし、KJ 法による分析を行った結果、つぎの4点が確認された。 【1】RA提供は障害者本人が学校・教員等に「意思表明」することがそのスタートラインとされているが、RAは障害のある子どもの教育を受ける権利を保障するために必要な措置であり、既存の教育環境が障害のある子どもを排除するものになっていないか、教員が自身の授業などを省みることが対話の真のスタートラインとなること。 【2】初めて経験することなど本人が十分にイメージできていない可能性が高い学習の場合、教員の方から本人や保護者に授業で求めている資質・能力などの本質(目的)やこれらを身につけるための授業目標、内容、方法などをわかりやすく説明することが必要で、このためにふだんから本人の障害特性やニーズの把握に努めることが重要であること。 【3】授業の目的が子どもたちと真に共有化されていない(教員からのトップダウンである)場合、RA提供をめぐる対話がシステム化された「アダプテーション・ゲーム(AG)」の実践を行ったとしても、障害のない子どもはまだゲームの楽しさを味わえていない(RA提供が必要不可欠な)仲間の状況に目を向けることができないこと。ここで無理にRA提供を推し進めると、誤った障害観を形成してしまう恐れがあること。 【4】AGの「勝敗の不確定性を担保するルールの合意形成」を行うためには、すべての子どもがそのゲームに没入した経験をもち、またこの経験を障害のある子どもと障害のない子どもとの間で共有されていることが求められること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的を達成するために掲げたつぎの3点の課題、すなわち、「【課題①】RA事例を提示するデータベースを活用し、適切な対話が行われるために必要な事項や考え方を整理する」、「【課題②】課題①を分析枠組みとしながら共生体育に関する先行研究を対象に、対話の特徴や課題を整理し、体育授業における望ましい対話のあり方をまとめる」、「【課題③】体育授業においてRAを行ったことのある教員を中心にインタビューを行い、対話の実態に迫りながら、課題①・②から導き出した望ましい対話のあり方を実際の教育現場にどこまで落とし込むことができるのかを検討する」のうち、課題①はつぎの7つのデータベースの分析を行い、達成することができた。成果の一部は、日本アダプテッド体育・スポーツ学会第28回大会において報告した。 ■課題①の分析対象としたデータベース(7つ)■ 『内閣府(2023)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針』、『文部科学省(2015)文部科学省所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針』、『文部科学省(2017)障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)』、『日本学生支援機構(2016-2022)『障害者差別解消法』施行に伴う障害学生に関する紛争の防止・解決等事例集』、『日本学生支援機構HP(2023)紛争の防止・解決等のための基礎知識』、『日本学生支援プロジェクト研究(2019,2020)障害のある学生への修学支援における学生本人による効果評価に関する調査研究』、『内閣府(2023)令和5年度障害を理由とする差別の解消推進相談対応ケーススタディ集』 *いずれも、資料へのアクセス日は2023年11 月28日
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Strategy for Future Research Activity |
前項「現在までの進捗状況」に記した課題②については、すでに着手しているが分析対象を増やす必要がある。具体的には、「通級による指導」に関する資料などを追加収集しながら、分析を行い、結果をまとめる。課題①・②で得られた知見をもとに、課題③のインタビューを行うことを予定しているが、インタビュー協力者の人数が当初計画時よりも下回ることが懸念される。やむを得ず当初計画の人数を下回った場合は、ケーススタディとして深くその実態に迫っていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最も大きな理由は、当初計画にあった大型プリンターの購入を見送ったことである。次年度にあらためて購入を予定しており、適切に使用することを計画している。つぎに、予定していた研究打ち合わせが勤務の都合上、断念せざるを得ない状況となり、出張を取りやめたことが影響している。次年度にこれを行うことで、計画通りに研究を遂行し、適切に使用していきたい。
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