2023 Fiscal Year Research-status Report
距離指定型命令セットアーキテクチャによる超高効率実行の実証
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23K19975
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小泉 透 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (20981525)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 計算機アーキテクチャ / 命令レベル並列性 / アウトオブオーダー実行 / 最適化コンパイラ |
Outline of Annual Research Achievements |
命令オペランドをレジスタ名ではなく「何回前にレジスタに書き込んだ値」のように距離で指定する命令セットを距離指定型命令セットと呼ぶ。 今年度は、距離指定型命令セットに分類され、我々が提案する新しい命令セット、Clockhandsについて研究を行った。まず、SPEC CPUベンチマークについて、Clockhands命令セットに変換する際の最適化に新たな手法を導入した。これにより、RISC-V命令セットに対する命令数増加を平均8.7%と一割未満に抑えることができた。次に、Clockhandsプロセッサの性能(プログラムの実行速度)をRISC-Vプロセッサの性能と比較した。その結果、同時フェッチ命令数が8のコンフィギュレーションでは99%、同時フェッチ命令数が16のコンフィギュレーションでは102%と、ほぼ同等の性能を達成できることが判明した。さらに、消費エネルギーの評価を行った。評価の結果、ClockhandsプロセッサはRISC-Vプロセッサに対して、同時フェッチ命令数が8のコンフィギュレーションでは8%、同時フェッチ命令数が16のコンフィギュレーションでは32%、消費エネルギーを削減できると判明した。
結論としては、Clockhands命令セットは、命令セットに新機能を搭載しなくとも、(1)命令数増加オーバーヘッドはそれほど大きくなく、(2)性能はほぼ同等レベルを達成可能であり、(3)消費エネルギーを削減可能であり、(4)特にフェッチ幅が大きい時に消費エネルギー削減効果が高い、の四点に要約される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2024年度に実施予定だった作業を一部前倒しすることができたため。
当初の計画では、ハードウェアアルゴリズムの改良と命令セットへの新たな機能の追加が、命令当たりにかかる消費エネルギーの削減に必須であると考え、それに関する作業を行う必要があるとしていた。しかし、実際にはそのようなことを行わなくても、コンパイラアルゴリズムの改良のみで十分に消費エネルギーを削減できることが判明した。これにより、作業時間が浮いたため、ソフトコアの実装を洗練させる作業に充てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、ソフトコアの実装を洗練させ、試作チップのテープアウトに力を注ぐ。2024年度第二回チップ試作に間に合うように作業し、問題が発生したとしても第三回チップ試作には絶対に間に合うように作業する。テープアウト後はプログラムの高度な最適化を行えるようにし、試作チップでの高速なプログラム動作を補助できるようにする。 試作チップでの評価が取れ次第、論文を執筆し、投稿する。
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Causes of Carryover |
当初予定ではハードウェアシミュレーションを多く行うためクラスタ計算機が必要であるとしていた。しかし、ベンチマークプログラムの最適化を行うことで十分に高い電力効率が達成できると判明したため、ハードウェアシミュレーションが不要となり、クラスタ計算機の購入が不要となったため、2023年度使用予算額が大幅に小さくなった。 チップ作製には、その検証を含め、大きい金額の支出が必要となるため、もともと2024年度予算額では不足気味であった。2023年度からの繰り越し金額は、テープアウト前の検証をより確実にするために使う予定である。
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