2023 Fiscal Year Research-status Report
ハロゲン化多環芳香族炭化水素のニワトリ胚に対する経時的毒性影響評価
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23K20030
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
神田 宗欣 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究部門, 研究員 (40982864)
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Project Period (FY) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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Keywords | 塩素化PAHs / 鳥類胚無卵殻培養 / ex ovo / 化学物質影響評価 / 発生毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和5年度は、ハロゲン化多環芳香族炭化水素(HPAHs)の一つである1-クロロピレン(1-ClPyr)のex ovoニワトリ胚に対する発生毒性の解明を目指し、研究を実施した。 まず、殻なし孵化システム用の全自動孵卵器およびニワトリ胚観察用ブラックボックスを設置し、ex ovo化学物質曝露試験の実施環境を整備した。化学物質を投与せずにニワトリ胚の無卵殻培養をおこない、孵卵9日目までに高い生存率(95.4%)を維持できていることを確認した。 次いで、1-ClPyrの曝露実験を実施した。対照群(0.1% DMSO)、0.001、0.01、および0.1 nmol 1-ClPyr/g eggを孵卵0日目のニワトリ有精卵に投与し、孵卵56時間後に割卵してニワトリ胚を無卵殻孵化装置に移動させた。孵卵3-9日目にex ovoニワトリ胚を観察し、画像・動画記録を用いて画像解析した。 孵卵7-9日目において、体長、頭+嘴長、眼直径、前肢長、および後肢長は1-ClPyr曝露群で減少を示した。生存率、胚体外血管長、および胚体外血管分枝数は、全ての1-ClPyr曝露群に有意な変化は確認されなかった。したがって、1-ClPyrは孵卵7日目以降のニワトリ胚を成長遅延させる可能性がある。また、9日目のニワトリ胚の体重は、0.1 nmol 1-ClPyr/g eggで有意に減少し、肝重量および肝重量/体重は曝露濃度依存的な減少傾向があった。一方で、心臓重量は影響を受けなかった。したがって、1-ClPyrがニワトリ胚の肝臓発達と肝機能に対して毒性作用を引き起こす可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題が採択されてから約半年間でex ovo化学物質曝露試験を実施するための実験環境を一から整備し、化学物質を投与しないニワトリ胚無卵殻培養で高い生存率を得られたことで、ハロゲン化多環芳香族炭化水素(HPAHs)のex ovoニワトリ胚に対する発生毒性を評価するための準備を完了させた。さらに、1-ClPyrの曝露実験を実施し、ニワトリ胚の表現型エンドポイントの測定に成功した。したがって、進捗状況は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、1-ClPyrのより高い濃度での曝露実験を実施し、生存率および表現型エンドポイントに対する毒性影響を調査する。また、今年度の実験で肝臓重量に影響が確認されたため、肝臓試料を用いたRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を実施し、mRNAの発現量を網羅的に測定する。1-ClPyrの曝露濃度依存的に発現変動する遺伝子を特定し、その作用機序および表現型との関連性について調査する。
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Causes of Carryover |
当初、今年度実施予定だったRNA-seq解析を次年度に行うこととしたため、その経費が次年度使用額となった。
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