2023 Fiscal Year Annual Research Report
オートファジーを介したシェーグレン症候群発症機序の解明と革新的治療薬開発への展開
Project/Area Number |
18H02971
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
山本 安希子 (山田安希子) 日本大学, 歯学部, 助教 (70452646)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 武範 国立医薬品食品衛生研究所, 遺伝子医薬部, 室長 (80457324)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 自己免疫疾患 / IL-1a / 細胞内局在 |
Outline of Annual Research Achievements |
シェーグレン症候群は主に涙腺・唾液腺を標的とする自己免疫疾患であるが、多くの研究が行われてきたにもかかわらず、その発症機序の詳細は未だ不明である。その理由の1つに、シェーグレン症候群の発症には多様な因子が複雑に絡んでいることが挙げられる。一方、オートファジーは近年様々な疾患との関連が報告されているが、シェーグレン症候群との明確な関連性は未だ明らかにされていない。 これまでに、われわれはミトコンドリアを介したオートファジーであるマイトファジー関連因子の発現が、シェーグレン症候群モデルマウスにおいて上昇していることを示唆する結果を得ている。一方で、IL-1aがシェーグレン症候群に関連していることを示す報告が散見されること、さらにIL-1aとマイトファジーとの関連を示す報告もなされていることから、シェーグレン症候群におけるIL-1aを介したマイトファジーの誘導機構や病態に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、IL-1aの機能解析に着手した。 IL-1aは壊死した細胞から細胞外に放出され、危機的状況であることを周囲の細胞に知らせるアラーミンとして機能する。最近になって細胞内においても様々な機能を担っていることが報告されるようになったが、その詳細は不明である。申請者はIL-1aを介したマイトファジーの誘導とシェーグレン症候群の病態との関連を明らかにするため、まず、IL-1aの細胞内局在がどのように制御されているのかを明らかにすることを試みた。その結果、IL-1aの核への移行メカニズムの一端を明らかにするとともに、IL-1aの核輸送関連因子がユニークな機能を有していることを示唆する結果が得られた(Sci Rep. 2024)。このIL-1aの核輸送関連因子の特異的な機能がシェーグレン症候群の病態に及ぼす影響を明らかにするため、当該因子について詳細な機能解析の実施に着手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度より徳島大学より日本大学に異動した。当初はシェーグレン症候群モデルマウスやそれらの解析機器が設置されている徳島大学に出向して解析を行うことを計画していたが、新型コロナウイルス感染拡大により徳島大学への入構制限を受け、実施が不可能であった。そのため、現所属講座においても実施可能な実験系を構築し、新たなアプローチにより、オートファジーを介したシェーグレン症候群発症機序の解明に繋がる研究を遂行してきた。具体的には、IL-1aがシェーグレン症候群の発症に関与していること、また、IL-1aはミトコンドリアを介したオートファジーであるマイトファジーの誘導に関連することが報告されていることをうけ、IL-1aの細胞内における機能に焦点をあてた研究を行った。2023年度はこれまで行ってきたIL-1aの細胞内局在の制御に関する成果についてとりまとめて発表した(Sci Rep. 2024 Jan 15;14(1):1322. doi: 10.1038/s41598-024-51521-w.)。さらに、このIL-1aの細胞内局在制御機構の解析から明らかにされたIL-1a核輸送関連因子について、詳細な機能解析に着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
IL-1aは壊死に陥った細胞から放出され、周囲に危機的状況であることを知らせるアラーミン分子として働くことが知られているが、一方で、細胞内においても重要な働きを担っていることが報告されている。しかしながら、IL-1aの細胞内における機能の全貌は明らかにされていない。ミトコンドリアを介したオートファジーであるマイトファジーに、IL-1aが関わっていることが報告されていることから、申請者らは細胞内におけるIL-1aの機能とシェーグレン症候群の発症および病態との関連に着目し、まずIL-1aの細胞内局在の制御機構の解明に着手した。その結果、IL-1aの核移行を制御するメカニズムの一端を明らかにし、報告した(Sci Rep. 2024 Jan 15;14(1):1322. doi: 10.1038/s41598-024-51521-w)。また、同時に本論文中で解明したIL-1aの核輸送関連因子について、非常に興味深い性質を有していることが明らかになった。今後は引き続き、シェーグレン症候群におけるIL-1aを介したマイトファジー誘導機序の解明および病態への関与を解析するとともに、申請者が明らかにしたIL-1a核輸送関連因子がシェーグレン症候群の発症や病態に及ぼす影響についても解析を進めていく予定である。
|