2018 Fiscal Year Annual Research Report
Aspects of Everyday Life in Latin American Societies after Political Catastrophe
Project/Area Number |
18H03453
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石田 智恵 早稲田大学, 法学学術院, 専任講師 (50706661)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
狐崎 知己 専修大学, 経済学部, 教授 (70234747)
細谷 広美 成蹊大学, 文学部, 教授 (80288688)
内藤 順子 早稲田大学, 理工学術院, 准教授 (50567295)
柴田 修子 同志社大学, 人文科学研究所, 嘱託研究員 (70573707)
渡部 奈々 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 助教 (00731449)
近藤 宏 立命館大学, 衣笠総合研究機構, 研究員 (20706668)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 紛争 / 内戦 / 軍政 / 記憶 / ラテンアメリカ / 日常性 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度となる2018年度は、研究代表者・分担者それぞれのフィールドでの調査の進展、および本研究課題にかかわる海外の研究者との交流に注力した。 分担者の狐崎はエルサルバドルにおいて恩赦法の撤回問題と移行期正義をテーマとする研究機関と人権団体からのヒアリングを行うとともに、東部地域では紛争後帰還難民の日常的位相について生活改善アプローチからの実証評価に必要な情報収集を行った。細谷はペルー調査において、紛争をテーマに作品制作を行なう先住民民俗芸術家にインタビューし、先住民のコスモロジーと紛争経験の関係、また紛争後の平和構築のプロセスを通じた作品の変化を分析した。内藤はチリの人びとが軍政後に展開している社会運動的な大小さまざまな実践に焦点を絞り、意識的・無意識的な日常の取り戻し方あるいは人権保障やトラウマ解消などの追求の様子を調査・考察した。柴田はコロンビアにおけるポスト紛争期の日常的位相に関して文献収集および聞き取り調査(トゥマコ市)を行ない、紛争後に新たに誕生した元FARC構成員によるグループの動向について情報を得た。近藤は、コロンビア・キブド県での調査で、現地先住民組織を介して20名以上の強制移住被害者のライフヒストリーの聞き取りを行なった。渡部はアルゼンチン・ブエノスアイレスで調査を行ない、民政移管後の宗教の変容に関する文献収集、現地研究者との面談交流、強制拉致被害者の聞き取り調査、デモ参与観察などを実施した。石田(代表者)はブエノスアイレスでの調査で、軍政期の暴力の記憶に関して近年特に注目されている性暴力に関する人権組織の取り組みについて、活動家・被害者らに聞き取りを実施した。 3月には、ペルー内戦後の秘密墓地発掘の政治性と、先住民系の行方不明者家族の諸実践の関わりを調査研究する文化人類学者イサイアス・ロハス-ペレス氏(米ラトガーズ大学)を招聘し、公開講演会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メンバーによる個々の現地調査は予定どおり進んでいる。個別に若干の予定変更はあったが、調査地の現状に即して対応し調査を進め、それぞれに進捗が見られる。また、各自がそれぞれの調査地にて、本研究プロジェクトと関係する現地研究者と交流を進めている。たとえば石田は、ブエノスアイレス大学社会科学部との共同研究を仲介に、民政移管後の記憶の構築における「ユダヤ性」の位置を論じてきた歴史学者A・Kahn氏とコンタクトをとるほか、失踪者家族会の活動を調査しつつ記憶のプロセスの議論を展開してきた文化人類学者への面会の準備をしている。狐崎は、紛争難民を起源のひとつとするギャング集団で現代エルサルバドルにおける深刻な社会問題のひとつと見なされる「マラス」の重要な研究者であるJ・Aguilar氏(エルサルバドル中米大学)との交流、研究協力を深めている。近藤は、コロンビアの太平洋岸で起きた左派ゲリラによる住民虐殺(左派ゲリラの社会的イメージを大きく変えたとされる出来事でもある)の被害を受けたコミュニティで調査を進める人類学者とコンタクトを取っている。他のメンバーも初年度の調査で現地研究者との交流を深めており、各自が現地でのアクチュアルな研究動向を踏まえて次年度以降の調査・成果発表に結実させるべく研究を進める条件を整えている。 2018年度中、メンバー向けの研究会を3回行なった。2回目には同年度に調査を実施したメンバーの報告のほか、それぞれの調査地でどのようなことに目が向けられるか意見交換を行った。また3月に開催した公開研究会に招聘した人類学者のイサイアス・ロハス-ペレス氏とはさまざまな観点から意見交換をしただけでなく、今後も本プロジェクトとの協力関係を維持することについて了解を得た。初年度のため研究成果の数は少ないが、今後も調査を継続することで、有意義な成果が得られると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトの研究期間は残り4年間であり、その全体的成果については論文集のかたちで発表することを計画している、そのために、二つの方針を立ててプロジェクトを進めている。ひとつは、先にも記したように、現地調査の際に現地の研究者と積極的に交流をすることである。これによって、各自の研究が現地でのアクチュアルな研究動向を踏まえたものになることが期待される。さらに、成果発表論文集などへの寄稿・貢献の可能性も含めて相談を進めている。 2年度目、3年度目は、初年度同様、各自のフィールドワークにも引き続き注力する。同時に、研究成果発表に向けて、定期的にプロジェクトメンバーによる研究会を開催し議論を深めるほか、学会でのパネル発表に向けた準備を進めている。とりわけ3年目に、パネル発表ができるように、2年度目となる今年度には、これまでの調査成果に関する議論のみならず、調査をふまえて重要になる論点を整理するためのディスカッションを研究会で行なうようにする。
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Research Products
(11 results)