2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01195
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
合田 正人 明治大学, 文学部, 専任教授 (60170445)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石原 悠子 立命館大学, グローバル教養学部, 准教授 (40846995)
志野 好伸 明治大学, 文学部, 専任教授 (50345237)
竹花 洋佑 福岡大学, 人文学部, 准教授 (60549533)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 東アジア哲学 / 翻訳 / 自然 / 京都学派 / 現象学 / 新東亜秩序 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度、前年度からの繰越企画として、第二回の東アジア哲学国際学会(ISEAP)をオンライン形式で12月10-11日に開催するとともに、11月にはスプリンガー(Springer)社からのJournal of East Asian Philosophy(JEAP)の第一号を刊行することができた。しかし、いずれも予定を一年延期しての企画実現であり、早急にISEAPの第三回学術大会を企画し、JEAP第2号を編集し刊行することが次なる課題となった。 そのために、胡潁芝氏(御茶ノ水大学、明治大学兼任講師)に引き続きISEAPならびにJEAPの運営、編集のために雇用した。加えて、JEAP編集部を改組し、研究分担者の石原悠子が編集長となり、同じく研究分担者の竹花洋佑と研究代表者の合田正人が副編集長を務めることとなった。その他にも内外の研究者たちの協力を得て、結果的には、2022年7月にJournal第二号を公刊することができた。論文6本、翻訳1本、書評1本を収録している。現在、第三号以降の企画に注力しているところである。 当初、本研究はISEAPの立ち上げとその第一回の学術大会開催(於明治大学)に続いて、パリ大学との協働、更にはパリ大学での学術会議開催をめざしていたが、研究代表者の合田と分担者の志野はかねてより、パリ第10大学(ナンテール校)哲学科のティエリ・オケ教授、フランス国立東洋言語文化学院のシモン・エヴェルソルト講師が主宰する日本哲学国際シンポジウムに参加しており、本研究を推進する過程で、このつながりを更に深めることができた。2021年には哲学概念の日本語への翻訳、2022年には日本的「自然」をめぐるシンポジウムが開催され、それぞれのシンポジウムで合田がフランス語で研究発表を行った。この協力関係は2021年後半から、フランス初の日本哲学事典(フランス語)の企画にへ発展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
感染症拡大という大きな障害が立ちはだかったとはいえ、次のような企画を何とか実現することができたという点で、概ね順調に進展している、と判断する。Journal第一号、第二号を刊行するに加えて、Journal創刊を記念して2021年9月11日にオンライン形式で国際シンポジウムを開催した。1)J. Makeham(オーストラリア国立大学):Xiong Shili's Ti-Yong Metaphysics and the Treatise on Awakening Mahayana Faith's ''One Mind, Two Gateways'' Paradigme、2)林少陽(香港城市大学):The Trinity of Capital-Nation-State or the Quaternity Language-Capital-Nation-State? --A Dialogue with Karatani Kojin's Political Philosophy、3)合田正人(明治大学):Seas and Islands in Tetsuro Watsuji : Fudo and Sakoku、の三人が講演を行い、林鎮國(国立政治大学)、佐藤将之(国立台湾大学)、石井剛(東京大学)の司会のもと、活発な議論が交わされた。和辻哲郎『風土』のフランス語訳者オギュスタン・ベルク氏も討論に加わった。 本研究では各研究者がその知的ネットワークを拡充しつつ研究を進めることを目指しているが、合田は第二回のISEAPの学術大会をオンライン形式で実現したのに加えて、パリ第10大学で開催された、日本哲学をめぐる国際シンポジウムに参加し、「存在」という訳語、寺田寅彦の「自然」観をめぐってフランス語で発表した。フランスにおける日本研究者たちとの交流を深めることができたのも大きな収穫であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として挙げるべきは、第一に、JEAP第三号以降の企画、編集、刊行である。現時点では、「東アジアにおけるsentimentalism」、「東アジアにおけるrationality]がテーマとして上がっているが、沖縄、満洲国、大東亜共栄圏など、これまで日本哲学との関連で問題とされてこなかったテーマもすでに提案されており、どのような企画が可能か模索中である。合田は伊波普猷についての研究をすでに発表してはいるが、哲学的問題として例えば「沖縄」をどう捉えるのか、これは決して容易な課題ではない。Journalではまた、今後、日本哲学文献の翻訳を積極的に行う。 第二は、第三回のISEAP大会の開催であるが、これはすでに2023年9月15-16日にエディンバラ大学での開催が決定しており、二人の基調報告者を韓国、アイスランドから招聘する予定である。現在、発表者を広く募っている。 第三は、フランスを初めとするヨーロッパ各国の日本哲学研究者との知的ネットワークの構築、その拡充である。研究補助さの胡氏は2023年6月にベルギーでタオイズムについて発表する。合田はパリ第10大学、フランス国立東洋言語文化学院との協働関係を深めていく所存である。何よりもフランス初の「日本哲学事典」の刊行が大きな目標となるだろう。パリ第10大学の教授でデリダの専門家セバー教授とも、東アジア漢字文化圏の思想文化の力動的関係を探るためにデリダ の「グラマトロジー」を応用する可能性を探ることを計画している。 第四に、2023年3月の学術シンポジウムでの井上貴恵氏(明治大学)での発表を踏まえ、戦前。戦中における日本にイスラーム研究と大アジア主義の問題を、本研究の課題としたい。四人の研究者それぞれの専門分野からこの問題にアプローチし、その成果をISEAPの大会で披露し、かつJEAPに論文投稿することを今後の課題としたい。
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