2022 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル(元)時代のインドシナ半島大陸部諸王朝における宗教美術の諸相
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20H01209
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa College of Art |
Principal Investigator |
水野 さや 金沢美術工芸大学, 美術工芸研究所, 教授 (10384695)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朴 亨國 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (00350249) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 石塔 / アンコール朝 / 元 / 遼 / 金 / 高麗 / 浮彫尊像 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度も国外調査実施には至らず、主に(1)国内での関連調査と(2)研究会に切り替えた。 (1)昨年度からの継続として、いわゆる「薩摩塔」の補足調査を行った。薩摩塔基壇部(須弥壇部)の尊像について構成と図像の分析を行い、先行研究における「特定の経軌に依拠するものではない」という見解の再確認と共に、以下について指摘し得た。薩摩塔は、手本となる作例が中国系工人により作られた可能性があるが(中国で作られたのか日本国内で彼らが制作したのかについては未だ判断を保留するが、後者の可能性を検討している)、中国系工人(石塔・石燈などの建造物以外の、単独の仏教尊像の造立経験を有する、その図像的見識を有する)が関わった薩摩塔が、その地域の一つの「古典」と認識される。それを模すという意識で、同形の塔が比較的近隣に制作される。この過程において、石造物ならではの図像的特徴の簡略化と誤認が生じる。仏教尊像を専門に制作する工人ではない石工が担当し、しかも細部の彫刻が難しい比較的小型の塔であったための技術上の工夫であったと判断される。こうした省略・簡略のシステムは、朝鮮半島および遼東地域の石塔の浮彫尊像においても認められるものである。 (2)アンコール王朝の宗教美術、元代の都城制と広域交流、遼・金の都城と寺院址を専門とする国内研究者3名を招聘し、関係者のみの研究集会として3月下旬に開催した。本研究集会において、あらためて、今日、元代史への視座に従来以上の広範かつ柔軟な視点が想定されていること、モンゴル(元)というフィルターを設定することによって、東南アジア史研究領域における地域研究先行型の現状に、別種の観点を提供し得る可能性を確認した。一例として、アンコール朝13世紀後半の触地印如来坐像と上座部仏教受容の問題に対し、この時期、東アジアで再び着目されていた三劫三千仏思想を背景とする考察の可能性を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
相手国の事情により、海外における実地調査に制限があり、調査先機関との打ち合わせが頓挫したことが主な要因である。
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Strategy for Future Research Activity |
主に次の方策をとる。(1)海外における実地調査の円滑な実施に向けて、関係各所にあらためて協力を依頼する。(2)研究分担者1名、研究協力者2名を新たに向かえて研究体制を再構成する。(3)研究集会を定期的に開催し、これまでの研究成果の見直しかつ取りまとめ(明文化)および公開する。
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