2020 Fiscal Year Annual Research Report
西チベットにおける古チベット語碑文の総合的研究 ~岩石碑文の歴史的意義の再検討~
Project/Area Number |
20H01327
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西田 愛 京都大学, 白眉センター, 特定准教授 (90723693)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武内 紹人 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 名誉教授 (10171612)
井内 真帆 神戸市外国語大学, 外国学研究所, 客員研究員 (90514323)
岩尾 一史 龍谷大学, 文学部, 准教授 (90566655)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 西チベット / 碑文 / ラダック / 古チベット語 / 石刻史料 / チベット史 / 岩石碑文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、詳細と現状が十分に知られていない西チベットの石刻碑文について現地調査を行い、そこから得られた知見を各種文献と対照させることによって、西チベット碑文の内容をチベット史および中央ユーラシア史に位置付けることを目的とする。しかしながら、新型コロナウイルス流行の影響により現地調査が不可能となったため、本年度は刊行資料の収集と取りまとめ、および電子データによる碑文の予備調査とデータベース化、分析に注力した。
具体的には、第一に先行研究の蓄積があるインダス川沿いのAlchi、Kalatse、Balukharおよび近年発見されたKharulの岩石碑文について録文のデータベース化および氏族名の抽出と分析を実施した。ラダック地域で近年発見された岩石碑文に関しては、碑文の発見者であり研究協力者でもあるDeversから写真の提供を受け、それをもとに分析を開始した。また、これらの碑文の所在地を地図上にインプットしていくための地図作成にも取り組んだ。 次に、西チベットに関連する伝世文献のうち、『リンチェン・サンポ伝』と『ガリ王統記』のデータベース化を完了し、『リンチェン・サンポ伝』からは地名の抽出も行なった。東トルキスタン出土木簡についても読解とデータベースへの入力作業を進めた。 また、研究初年度にあたる今年度は3回の研究会議を開催した。初回の研究会議では、海外渡航が不可能となった状況下での年次計画と研究分担の調整を行い、研究代表者である西田が西チベット碑文の現状と最新の研究状況について紹介した。第2回研究会では、分担者の井内が西チベット伝世文献に関する資料状況について、同じく分担者の岩尾が古チベット語金石文全体の概況について発表し、本研究で取り組むべき課題が示された。第3回研究会では、代表者が過去に現地調査によって録文を確認したFrancke発見の岩石碑文について内容を全員で検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの流行により、予定していた現地調査が実施できなかった。経費の繰越申請が承認されたが、翌年度も現地調査が困難な状況が継続したため、経費の再繰越を行った。これにより2年度分の現地調査がずれ込んだだめ、計画よりも進捗状況がやや遅れる結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画を達成するため、遅れている現地調査を中心に進め、写真データなどから抽出した石刻碑文の内容を検証・校訂する。また、研究協力者を海外より招聘し、公開シンポジウムを開催する。これを通じて、ラダック地域における古チベット語岩石碑文について、最新の研究動向に関する意見交換、討論を行う。 また、新型コロナウイルス流行の影響が長引く場合には、オンライン会議を通じて海外の研究協力者との情報共有や議論の場を設けるほか、活発になりつつある国際学会へのオンライン参加も積極的に進める。また、本研究によって得られた成果を国内外の学術雑誌及び学会・研究会を通じて順次公開する。
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