2020 Fiscal Year Annual Research Report
From chariot to riding: review a history of livestock and humanity in ancient China
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20H01345
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
菊地 大樹 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 客員研究員 (00612433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究センター, 助教 (70749530)
板橋 悠 筑波大学, 人文社会系, 助教 (80782672)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 骨考古学 / 馬車文化 / 騎馬文化 / 古代DNA / 同位体化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、中国の古来より社会・経済システムの中核的役割を担っていた馬と、それを利用する社会階層の視点に立ち、馬車から騎馬への転換過程の背景を探る事を目的としている。コロナ禍の影響で、メンバー全体での現地調査が難しい現状にあるため、今後の実践的な調査分析に備え、研究体制の整備に努めるとともに、それぞれが研究分担とする関連分析・研究の動向を確認しながら、研究報告の集積を進めた。秦は古来より馬の飼養技術に長けており、安定的な馬匹生産体制に支えられた巨大な軍隊が組織される。秦が保有していた馬の様相については、近年、遺跡出土馬骨の考古科学分析から詳細な復元が可能となってきており、多種多様な馬が利用されていたことが示唆されている。そこで、古典籍や出土文字資料の整理を基軸に、当時の馬の実像に注目した。秦の法律には、軍馬の選抜条件が記されており、その基準は秦始皇帝陵兵馬俑坑の馬俑と一致する可能性を見出し、実際に現地で確認する機会を得た。そして、この基準が秦王朝成立以前の戦国時代秦国においてすでに確立していたことを、戦国秦の王陵に属する祭祀坑出土馬骨の再分析から導き出した。さらに、秦始皇帝陵出土馬の分析から、必ずしも軍馬としての基準を満たしていない小型馬の存在も認められ、こうした小型馬の利用については秦律にみられないものの、馬車から騎馬へと馬の利用が変化するなか、秦が馬の適性に合わせて巧みに使い分けていた可能性を想定した。その成果は、国際シンポジウム「秦の淵源-秦文化研究の最前線-」や、日中国交正常化50周年記念特別展「兵馬俑と古代中国~秦漢文明の遺産~」への協力の中で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実践的な調査が制限されているものの、関連する研究データの集積や歴史学的な研究から導き出された秦馬の実像について、実証的な検証から比較基準が出来たことは大きな進展である。また、牧畜文化圏と農耕文化圏における同位体や古代DNA分析報告の集積を終えて解析作業に移っており、研究計画を調整しながら着実に成果を出せている。コロナ禍にありながらも、積極的なアウトリーチ活動についても国内外で実施できていることから、順調に計画研究は遂行されている。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍の動向は未だ不透明であるが、現地研究機関とは継続的に連絡を取り合っており、最新の研究成果について情報交換しながら、現地の情勢を見極めつつ実地調査を実施する。特に、古代DNA分析については、中国社会科学院考古研究所との連携を加速させる。また、古人骨の自然人類学的分析成果を組み合わせることで、骨考古学的研究を進展させる。
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