2023 Fiscal Year Annual Research Report
蛍光X線分析と鉱物組成分析による大和の古代寺院・宮都出土瓦の生産・供給体制の研究
Project/Area Number |
20H01362
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
清野 孝之 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 部長 (00290932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
道上 祥武 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (10827330)
降幡 順子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部保存科学室, 室長 (60372182)
森先 一貴 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (90549700)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 古代瓦 / 胎土分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、古代国家成立期である7世紀の大和の寺院・宮都出土瓦の生産地推定に、従来おこなわれてきた考古学的分析に加え、蛍光X線分析と岩石記載学的手法を併用した胎土分析法を採用し、当該期における瓦の生産・供給体制の研究を体系的に再検討することを目的とする。 研究の4年目に当たる令和5年度は、7世紀後半に飛鳥の中心部に創建された川原寺の出土瓦について検討を進め、①川原寺出土の川原寺創建軒瓦の分析、②川原寺瓦窯出土の川原寺創建軒瓦の分析、③川原寺以外から出土した川原寺創建軒瓦と同笵の軒瓦の分析等を実施した。 ①については、奈良文化財研究所が所蔵している川原寺出土の川原寺創建軒瓦の分析を進めた。特に川原寺主要伽藍中心部の調査(1957~58年)出土資料の見直しを行い、笵傷進行と製作技術の変化について、詳細な検討を行った。その結果、これまで笵傷進行が把握されていなかった種においても、新たに笵傷進行が認められることを明らかにするとともに、これまで確認されていた笵傷進行をさらに細分化可能であることを確認した。また、それに合わせて製作技法の変化が認められることも確認した。 ②については、川原寺創建期の瓦窯として知られる川原寺瓦窯の出土瓦の再検討を行った。その結果、川原寺瓦窯産の瓦の特徴を明確にすることができ、川原寺創建期の造瓦体制を明らかにする重要な手がかりを得た。 ③については、川原寺創建軒丸瓦(川原寺601型式E種)と同笵であることが知られる三重県桑名市額田廃寺の出土瓦の調査を実施した。この結果、額田廃寺出土例が従来の指摘通り川原寺創建軒丸瓦と同笵であることのほか、大和から持ち込まれた可能性が高いことを確認する成果を得た。 ②により得られた成果については、すでに公表した。①、③により得られた成果については、令和6年度にとりまとめる報告書において公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで重点的に調査・分析を進めてきた川原寺創建軒瓦については、川原寺出土例についてほぼ全体像を把握することができた。川原寺創建瓦を生産した瓦窯や、川原寺以外から出土した川原寺創建軒瓦の同笵例についても順次調査を進め、その成果が積み上げられてきている。最終年度の成果のとりまとめに向け、現在、順調に調査・研究が進展している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間で蓄積してきた7世紀の飛鳥地域を中心とする古代瓦の検討、とりわけ川原寺創建軒瓦の調査・分析、およびその成果の一部公表により、川原寺創建期の造瓦の様相が明らかになりつつある。最終年度に当たる令和6年度は、これまで積み上げてきた考古学的分析と胎土分析の成果を合わせてとりまとめる。これにより、7世紀後半における国家的な寺院造営の実態解明が進むとともに、その前後の同様の事例との比較検討をおこなうことが可能になるものと考える。
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