2020 Fiscal Year Annual Research Report
The Construction of a Metallurgical History in East Asia Through Metallurgical Materials Focusing on Clay Mold
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20H01365
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
丹羽 崇史 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (40455564)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長柄 毅一 富山大学, 学術研究部芸術文化学系, 教授 (60443420)
村田 泰輔 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 主任研究員 (00741109)
森 貴教 新潟大学, 研究推進機構, 助教 (30775309)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 土製鋳型 / 砥石 / 侯馬鋳銅遺跡 / 冶金史学 / 実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年、中国で進展の著しい、人類の冶金の歴史を考古学・文化財科学双方から検討をおこなう「冶金史学」の方法論、および鋳型・砥石・羽口といった冶金関連遺物の日本の考古学・文化財科学の方法論を共有し、日中双方の研究蓄積共有にもとづく「東アジア冶金史学」の構築を目指すものである。とくに春秋戦国時代の工房遺跡である山西省侯馬鋳銅遺跡を主な対象として、土製鋳型・砥石・羽口など冶金関連資料の調査・分析を実施する。2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響を受け、中国渡航がかなわなかったため、中国側の共同研究者とインターネットを通じて連絡を取りながら、日本国内で進めることが可能な以下のような調査・研究を進めた。 ①侯馬鋳銅遺跡出土砥石との対比可能なデータを得るための奈良文化財研究所が所蔵する平城京出土砥石の調査。 ②高岡市博物館所蔵資料を中心とした現代の鋳型・原型など民具資料の調査。 ③これまでの科研費で進めてきた鋳造実験製作試料のⅩ線CTによる内部構造調査。 このほか、過去に調査をおこなった侯馬鋳銅遺跡を中心とした冶金関連遺物の調査資料の再整理をおこなったほか、学生アルバイトを雇用し、日本・中国における冶金関連資料の既発表資料の収集を進めた。さらに2021年度以降の中国現地での調査に備え、関連する機器類の購入を進めた。このほか、成果の一部は、日本中国考古学会2020年度大会で誌上発表をおこなったほか、論文として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように、2020年度は新型コロナウィルス感染症の影響を受け、中国渡航がかなわなかったため、①平城京出土砥石の調査、②現代の鋳型・原型など民具資料の調査、③これまでの科研費で進めてきた鋳造実験製作試料のⅩ線CTによる調査、④過去に調査をおこなった侯馬鋳銅遺跡を中心とした冶金関連遺物の調査資料の再整理を進めた。中国現地調査がかなわない状況ではあったが、①~④のそれぞれにおいて、一定の成果を得ることができた。今後、学会発表・論文の形で公表を進める予定である。 また、中国側の共同研究者とは密に連絡を取り、調査・研究の連携を図った。まず、先方が単独で侯馬鋳銅遺跡出土資料の調査を行う折には、当方の希望を伝え、問題意識の共有化をおこなった。また、当方の日本国内における調査成果についても随時報告し、インターネットを通じて調査成果の共有を進めた。現地での調査が適わない状況ではあったが、インターネットなどのツールを積極的に利用して情報共有を図る国際共同研究の方法の構築を試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
①鋳型・砥石など冶金関連資料の考古学的調査 (1)出土鋳型の資料集成とデータベース化:中国・韓国・日本の鋳型・冶金関連遺物・青銅器とそれらの材質・構造分析に関する関連文献の集成・データベース化を進める。 (2)資料調査:現地への渡航が可能になった場合、侯馬鋳銅遺跡の出土資料を中心に、鋳型・砥石・羽口など冶金関連遺物の調査をおこなう。また、奈良文化財研究所所蔵品を中心に、国内機関所蔵の冶金関連遺物の調査を進める。 ②鋳型の材質・構造等に関する文化財科学的調査:これまで実験製作した鋳型や実験試料の通気度測定・材質分析、Ⅹ線CTと解析ソフトを用いた鋳型の内部構造解析を実施準備を進める。奈良文化財研究所ではⅩ線CTを用いた鋳型の内部構造解析、富山大学では鋳型の通気度測定・材質分析(XRF・SEM等)をおこない、実際の出土鋳型と対比するためのデータを蓄積する。 ③現代の鋳型・鋳造技術の民俗調査:伝統的手法によって製作を行っている鋳造工房の鋳型の素材・製作技法について調査を進める。文献資料の収集整理とともに、国内の鋳物工房の調査を実施する。 ④日本国内の土素材の調査:工業・陶芸用をはじめとした土素材のカタログを収集し、必要に応じて入手して、奈良文化財研究所・富山大学等で分析を進める。
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