2021 Fiscal Year Annual Research Report
対覇権主義的学問ネットワークとしての「世界民俗学」構築へ向けた基盤的調査研究
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20H01412
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
島村 恭則 関西学院大学, 社会学部, 教授 (10311135)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 星 神奈川大学, 国際日本学部, 教授 (00329591)
山 泰幸 関西学院大学, 人間福祉学部, 教授 (30388722)
桑山 敬已 関西学院大学, 社会学部, 教授 (50288057)
岩本 通弥 東京大学, 大学院総合文化研究科, 名誉教授 (60192506)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 世界民俗学 / 山下欣一 / 荒木博之 / インディアナ大学 / 奄美学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.コロナウィルス感染症の拡大のため、予定していた海外調査は実施できなかったため、計画を変更して、研究代表者による世界民俗学史に関する国内調査を実施した。 日本の民俗学は、基本的に日本国内の調査・研究で完結する傾向が強いが、学史をさかのぼると世界の民俗学を視野に入れた活動をしていた民俗学者の存在に行き当たる。柳田國男に直接師事した丸山学、池田弘子、関敬吾、大藤時彦、あるいは直接の指定関係にはない荒木博之、山下欣一らがそれにあたる。そこで、本年度は、これらの研究者の事績に関して資料を収集するとともに、その方法論や民俗学思想の形成過程について考察を行った。そして、このうち山下欣一については、インディアナ大学においてアメリカ民俗学の理論を吸収しつつ、活動基盤であった奄美にこだわりぬくというグローカルな研究姿勢を堅持していた点でユニークであり、山下の民俗学について重点的に行った(山下の学問を「奄美学」として継承する奄美の民俗者たちとの協業的調査を実施)。その成果は、2024年に刊行予定の『世界のなかの民俗学』(実生社)で公にする予定である。 2.これとともに、研究分担者による本科研課題遂行のための個別研究をつぎのとおり実施した。岩本は、東アジアにおける「民俗」概念の来歴とその理論的再構成の可能性について検討した。桑山は、アメリカ民俗学におけるレシプロカル・エスノグラフィやコンサルタントという独自の概念について検討した。周は、中国民俗学の物質文化研究をアメリカのフォークライフ研究の枠組みと対照させ理論化させる作業を行った。山は、フランスにおける民間伝承概念の形成・変遷史について検討した。 以上、いずれも、コロナ禍に対応した代替的研究ではあったが、十分な計画の練り直しを経て実施したため、十分な成果を上げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症拡大の影響で、予定していた海外調査は実施できなかったものの、代替措置としての国内調査等を、予算の執行計画の再検討(計画的な繰り越し・再繰り越し)も含めて十分に練り、実施した。そのため、「研究実績の概要」欄で記載したとおり、大きな成果を得ることができ、また予算執行面でも予算を有効に活することができた。以上のことから、「当初の計画以上」とまではいえないが、「おおむね順調に進展している」との自己評価を行った。なお、この自己評価の裏付けとなる研究成果は、2024年度に本科研の成果とりまとめ図書として刊行予定の『世界のなかの民俗学』(実生社より刊行内定済み)において公にされることになっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度分は、上記のとおり「おおむね順調に進展」したので、引き続き、2022年には、新型コロナ感染症の拡大状況をにらみながら、第2回目の国際シンポジウムを韓国との間で実施するなど、本課題立案当初の研究計画を遂行するべきつとめる。コロナ拡大によって海外調査が不可能な場合は、代替計画(文献研究と国内調査)を十分に練り上げ、実施していく予定である。
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