2021 Fiscal Year Annual Research Report
Voluntary Jurisdiction in European History
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20H01414
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 翔 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30822796)
山中 聡 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (80711762)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非訟 / 西洋史 / ローマ法 / 教会法 / 学識法(法曹) / フランス革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、研究分担者の編著書1点に掲載の学術論文と、数点の関連業績を得た。前者は、中世欧州に伝播した訴訟法書が、イタリア半島に由来するローマ法と教会法(カノン法)を各地で定着させる役割を果たした姿を描いている。本研究の主題である「非訟」は、こうして受容された「ローマ・カノン法的訴訟」を補完する。中世ドイツを中心とした学識法曹による法的知識伝播過程を解明することで、この文脈に非訟を位置付け直す基礎的作業でもあり、前年度の史料邦訳を基礎としている。関連業績には、フランス革命に参画したブオナローティ伝の書評がある。革命による市民法典と非訟としての離婚裁判を関連付けて論究する次年度以降の出発点となる。他に、古代について、ローマにおける道路管理法を、利益実現手段の観点から論じる書籍掲載論文を得た。行政命令を申請しておき、紛争が激化すれば、訴訟に至る。その意味で、非訟と同じ機能を果たす。 加えて、数件の学会発表で、成果を示すと共に、参加者と討議して論点の深化を見た。近代国家の出発点としての共和国フランスにあって、国民国家の基本理念として公民と市民権が観念された。これを公示し共有することで、共和政体の担い手として国民が実質的にも主権者となる。訴訟と非訟の対比は、国民が当然に訴訟における当事者適格を有することを前提とする。その上で、争訟の度合いなどを基準に、非訟への振り分けが企図された。公民宣誓と建国記念に関する研究会報告は、「裁判を受ける権利」と、共和政体における国民との関係を子細に描く準備作業となる。また、ローマ商事法に関する学会報告も得た。決済手段に注目することで、商事非訟の対象となる事案に関する分析を蓄積する一里塚である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、編著書、書評、書籍寄稿論文、学会報告など、本研究の5カ年計画に沿い、前年度の到達点を発展させる分析を提示した。この成果を踏まえ、次年度以降には俯瞰的視点から、分担してきた検討を総合する業績を得るべく、各時代の特徴づけに着手している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、各分野で個別研究を進めつつ、全体像獲得につなげる。 古代については、ローマにおける非訟的手続として、担保物権の裁判外機能に注目して研究を進める。中世欧州については、教会裁判と世俗法との関係を解明する。また、フランスを中心とする近代に関しては、上記で予示した通り、革命期フランスにおける離婚裁判を非訟の中長期的視点から捉え直す予定である。 加えて、残る期間で論点整理と論考執筆準備に努める。
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Research Products
(10 results)