2023 Fiscal Year Annual Research Report
Voluntary Jurisdiction in European History
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20H01414
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 健 京都大学, 法学研究科, 教授 (70437185)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 翔 九州大学, 法学研究院, 准教授 (30822796)
山中 聡 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (80711762)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 非訟 / 西洋史 / ローマ法 / 教会 / 学識法曹 / フランス革命 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、原著論文1件、書評2件、学界動向論文3件、学会発表3件、図書寄稿3件、その他関連業績(論文邦訳・研究ノート)3件を成果として得た。 古代ローマの経験として、相続紛争が訴訟に持ち込まれる際、遺言を尊重しつつも、法定相続分に配慮した処理(現行の遺留分に類する思考法)が観察される。その具体的な計算方法、必要な手続、訴えを提起し得る原告適格の範囲、法定相続人側に求められる「持戻し」の意義と各当事者の利害得失ないし戦略、といった諸点は、原著論文で明らかとなった。 中世に関しては、13~14世紀シュパイヤーの都市参事会の非訟事件裁判権について、特に遺産・親子・後見関係事件の実務を検討しつつ、都市参事会と教会裁判所の関係について分析進めた。 近代については、総裁政府期の下院にあたる五百人会において、1797年に行われた、性格の不一致を原因とする離婚の停止の是非に関する議論を、議員演説を史料として検討した。性格の不一致を原因とする離婚が、社会に与える影響に関して、議員が様々な意見を持っていたことが分かった。また、そうした離婚の暫定的停止のあり方について、慎重に議論を進めようとする者がいたことも明らかとなったが、現在、これらの意見と、意見を表明した議員の党派との相互関係について、詳細を考察している最中である。 また、学会発表に際し、近現代の訴訟が前提とする却下と請求棄却の区別について検討を深化させ、立証責任との論理的連関を解明した。翻って、この区別を前提とせず、挙証責任分配ルールを必要としない非訟において、代替的に裁判所の裁量・評価(認定)の自由が機能する点が重要な役割を果たすとの見通しを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述の通り、原著論文、書評、学界動向論文、学会発表など、本研究の5カ年計画に基づき、前年度までの業績を踏まえ、非訟を多方面に検討した。この成果を基礎に、最終年度においては、代表者・分担者が各分野で析出した論点を見通す統合的研究を進め、時代と地域を超えた比較を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度の仕上げとして、各分野での個別研究(論文・学会発表)を世に問う。 古代については、ローマでの遺言問題が、正規の裁判を避け宣誓訴訟で決着した点に注目し、思想的・歴史的背景を分析し特徴を探る。中世欧州については、教会裁判所と世俗権力の訴訟手続の相関関係を事件史の手法で解明する。また、フランス近代に関しては、裁判を回避した恐怖政治期の政治文化を踏まえて、非訟を社会史的に再考する。 その上で、西洋史における非訟を俯瞰するための論点を整理するため、代表者・分担者全員で討議の場を設け、各自または共著の形で論考を執筆する。その際、上述の挙証責任と裁判所の裁量・評価という問題群(視点)を重視し、検討を進める。
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