2020 Fiscal Year Annual Research Report
New development in a cross-national comparison of welfare and tax
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20H01445
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 淳子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00251314)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 福祉国家 / 課税 / 再分配 / 資本主義 / 平等 / ポピュリズム / 所得税 / 付加価値税 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、その当初から、 COVIDの世界的な感染拡大という予期しない変化に見舞われた。成熟した民主主義国を中心とした政治経済学的観点から、1970年代以降、政治経済的発展をとげた新興国の租税国家の分析を加えての基本的視座の設定に関わる作業は、国際的な交流の困難などで遅れた。が、欧州大学院大学のPhilipp Genschelを中心に組織されたTax Introduction Dataset (TID)グループとの共同研究においては、既に世界220カ国で, 1750-2018年にかけて6近代課税の導入データは整備し終わっていたため(https://cadmus.eui.eu/handle/1814/65326)、メイルやオンラインによる意見交換と研究に専念し、結果として、2021年度には、共同研究の出版に漕ぎ着け、その1章を寄稿することができた。分析で取り上げたのは、現在、多くの国での福祉国家の主要財源となっている、所得税と一般消費税/付加価値税である。これらの課税は歴史の異なる時点で導入された。そのため、政治的経済的近代化のタイミングが異なる欧米諸国(と日本)と新興国の間では、近代国家形成の財政基盤となった課税が、前者は所得税、後者は付加価値税と異なる。こうした租税制度の歴史的発展が、これらの国々の税収構造と課税レベルの相違を生んだことを示した。また、コロナ禍により対面による学会が困難となる状況下で、オンラインによる招待講演を行い、2020年11月に行われた The Council for European Studiesのセミナーでは、コロナ禍の新たな状況を踏まえて、各国社会で増大する不平等をテーマに他のパネリストとの意見交換を行うなど、新たな状況での国際交流に対応することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID感染拡大という不測の事態はあったが、既に海外の研究者らと面識があり連絡手段が確立していたため、当初の遅れは取り戻すことができた。出版に漕ぎ着けられたことはその成果である。その結果、今後の研究の準備が遅れることになったが、これは、計画の変更を行うことで、最終的には問題にならないよう、今後の研究の推進方策を考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、社会的投資政策を軸に、比較政治学の観点から、福祉資本主義レジーム と調整型市場経済の関係を探る予定であったが、これには、コロナ禍への対応やそれによる変化を入れる必要がある。しかしながら、こうしたデータはすぐに整備されることはない。そのため、既にあるデータで、すぐに分析を行えるよう研究計画を変更した。具体的には、コロナ禍の直前の2019年に、ポピュリスト政党の国際的データベースがヨーロッパと米国でそれぞれ公表されたこと、さらには、政党の政策位置調査がヨーロッパ主要国で行われデータが公表されていることを受け、ポピュリズムと政策をめぐる政党の競争についての分析を行う。コロナ以後、各国が経済的対応に追われる中、政権党や既成政党が不利になる可能性を考える前提として、2019年以前の政党の競争空間を分析する。その上で、コロナによる影響を分析するデータが出てきた場合には合わせて分析を行いたい。
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Research Products
(2 results)