2021 Fiscal Year Annual Research Report
New development in a cross-national comparison of welfare and tax
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20H01445
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 淳子 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (00251314)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 福祉 / 租税 / 平等 / 再分配 / 比較政治 / 所得税 / 付加価値税 / ポピュリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
当該研究は、福祉資本主義レジーム論と資本主義の諸類型を結びつけ、そこに国家財政基盤の比較の観点を持ち込むことにより、独自の観点から、比較政治経済 研究に貢献することを目的として計画されたが、その当初から、 COVIDの世界的な感染拡大という予期しない変化に見舞われ、コロナ以前に欧州大学院大学の Philipp Genschelを中心に組織されたTax Introduction Dataset (TID)グループとの共同研究の業績をあげた後は、計画変更を余儀なくされた。 今年度は、福祉国家と租税国家の関係の研究を、欧米の専門家とオンラインによる交流を通じて進めるとともに、その問題関心に関わる政府行政の制度や政党政 治の研究を進めることで、コロナ禍の制約の下でも研究を進めた。前年度から引き継いだ政党政治の研究(繰越分)においては、ポピュリズム以降の政党政治が、福祉や租税を含む政策にどのような影響を与えたかという、比較の観点からの研究を、データが得られる国々を中心に進め、ポピュリズム以前の対立軸がポピュリスト以降、どのように変化していくかに関しては、それ以前 の政党政治により各国差があることを確認した。この成果をハイブリッド方式で行われたLaver Festschriftで発表し、ヨーロッパの研究者から有益なコメントを得た。さらに、従来の左右イデオロギー対立における政党の布置とポピュリズム以降の対立における政党の布置を統合させることで、より多くの含意を得ることに成功し、方法論の観点からの論文を発表することも視野に入れることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
COVID感染拡大という不測の事態はあったが、それと同時にオンラインによる交流も容易になったこと、計画を柔軟に変更したことで、当初の遅れは取り戻し、順 調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、社会的投資政策を軸に、比較政治学の観点から、福祉資本主義レジーム と調整型市場経済の関係を探る予定であったが、これには、コロナ禍へ の対応やそれによる変化を入れる必要があるが、データはまだ存在しない。そのため、既にあるデータで、関連する分析を行えるポピュリズムの影響に焦点を合 わせた研究にシフトした。具体的には、コロナ禍の直前の2019年に、ポピュリスト政党の国際的データベースがヨーロッパと米国でそれぞれ公表されたこと、さ らには、政党の政策位置調査がヨーロッパ主要国で行われデータが公表されていることを受け、ポピュリズムと政策をめぐる政党の競争についての分析を行っ た。これは、異なるコンテクストにおける競争を共通の空間で比較するという方法でも意義があるため、福祉と租税の関係についてはもちろん、今後は政策競争 一般の研究に資する、方法の問題も視野に入れて研究を進める。
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