2020 Fiscal Year Annual Research Report
市場支配力とマクロ経済:サーチ理論による産業組織、景気変動と格差の分析
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20H01476
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
工藤 教孝 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (80334598)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 弘暁 東京都立大学, 経営学研究科, 教授 (10348831)
花薗 誠 名古屋大学, 経済学研究科, 教授 (60362406)
尾山 大輔 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (00436742)
田中 頌宇将 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (00847965)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | サーチ理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
サーチ理論は、微小な粒子同士のランダムなぶつかり合いとして経済活動を再定義することで市場の「摩擦」をモデル化するが、「微小な経済主体」という世界観が分析上の制約となっていた。本研究は、「経済主体の規模」という概念を通じてその枠組みを大きく発展させ、世界規模で進む市場支配力の上昇などの市場構造の変質を、産業組織、景気変動に伴う雇用調整、所得分布の視点から解明することを目的とする。 プロジェクト1「摩擦的市場における企業規模」では、研究代表者と名古屋大学経済学研究科の花薗誠教授(研究分担者)による研究チームで研究を推進し、摩擦的な財市場に(販売員数で測った)「企業規模」の概念を導入することに成功した。ランダムな出会いしかできない市場では、買い手はより規模の大きな企業により出会いやすいという性質がある。このとき、規模の大きな企業がより強い価格支配力を持つことを解明した。研究成果を共同論文にまとめ、学術誌にて査読中である。また、本プロジェクトから派生した複数の新たな分析に着手しており、市場支配力についてさらなる解明を目指している。 プロジェクト2「摩擦的市場と景気変動」では、研究代表者と東京都立大学の宮本弘曉教授(研究分担者)による共同研究によって、景気変動上に発生する「所得効果」が労働市場の変動に与える影響を抽出することに成功した。また、技術進歩が所得格差に与える影響についての研究も行い、論文としてまとめることができた。本プロジェクト全体を通して、企業規模概念導入に伴う技術的難題を適切に回避する方法を解明し、関連する派生プロジェクトに応用している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プロジェクト1「摩擦的市場における企業規模」では、研究代表者と名古屋大学経済学研究科の花薗誠教授(研究分担者)による研究チームで研究を推進し、研究成果を花薗教授との共同論文「Market Structure and Price Dispersion: Asymmetric Oligopoly with Sequential Consumer Search」にまとめ、国際ジャーナルにて査読中であるが、一次審査を通過し、査読誌掲載に向けて前進している。 プロジェクト2「摩擦的市場と景気変動」では、研究代表者と東京都立大学の宮本弘曉教授(研究分担者)による共同研究によって、景気変動上に発生する「所得効果」が労働市場の変動に与える影響を抽出することに成功し、その研究成果を「General Equilibrium Effects and Labor Market Fluctuations」にまとめ、現在国際査読誌にて査読中である。 また、どちらのプロジェクトも、新たな派生プロジェクトを複数生んでおり、そのひとつは2020年度末までに新しい論文にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト1「摩擦的市場における企業規模」では、研究成果である「Market Structure and Price Dispersion: Asymmetric Oligopoly with Sequential Consumer Search」が現在国際ジャーナルにて査読中であるため、今後はエディターからのコメントを踏まえて分析を追加しながら2021年度中の掲載確定を目指す。また、本プロジェクトから派生した分析を別の論文としてまとめる計画である。 研究代表者と東京都立大学の宮本弘曉教授(研究分担者)による共同研究ではすでに数多くの数理モデルを開発済みであるので、今後は精緻なシミュレーションを通じて数理モデルと現実のデータを結びながら論文として仕上げていく計画である。
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Research Products
(16 results)