2020 Fiscal Year Annual Research Report
Informatics and Investment Analysis of Environmental, Social and Corporate Governance―ESG Analytics
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20H01488
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
前田 章 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (30317309)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石島 博 中央大学, 法務研究科, 教授 (20317308)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ESG / アナリティクス / 投資分析 / 環境 / ガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
近年企業活動のあらゆる局面で環境・社会・ガバナンス(ESG)に配慮した活動が尊重されるようになってきている.実業界では学術界に先行し,ESG投資なるものが進んでいるが,その実態は課題だらけであると言わざるを得ない.本研究ではこうした問題意識のもと,全体を3つのフェーズ[1]ESG評価指標の鑑定と統合指標の作成, [2]ESG情報開示の計量化と効果分析,[3]ESG投資の基礎理論,に切り分け,オーバーラップしながら進めていく.最終的に包括的な枠組み構築を目指すこととした. 2020年度は世界的パンデミックの中,研究集会・会合への出席など十分な研究活動を行うことができず,フェーズ[1]については当初の計画を十分に達成できなかった感がある.一方で [3](ESG投資の基礎理論)に早めに着手することにし,これについていくつかの学会発表を行うことができた.以下,これについて概略を記す. ESG投資の本質は,ESGに対して好ましい活動を行いつつ,市場平均を超えるリスク調整済みリターンを生み出すという,ダブル・ボトムライン効果にあると考えられる.そこで,その効果を合理的に反映する新たな「ESG資産価格評価理論」,及びその特別な場合としての「ESGを考慮した消費CAPM」と「ESGを考慮したCAPM」を構築するなら,それは新たな投資理論として大変有用なものになるであろう.そのカギとなるのは,ESGに対して好ましい活動を行う企業の資産価格を,CF価値に加えて将来に享受する「ESGに関する属性(ESGスコア)のヘドニック価値」を合理的に反映して評価するという考え方である.これにより新たな価格評価モデルとして,いわゆるEuler方程式を拡張したものとして表現されることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は世界的パンデミックの中,研究集会・会合への出席など十分な研究活動を行うことができなかった.特に,海外の研究者との交流の絶好の機会である海外学会への出席・参加がまったくできなかった.これは例年であれば年次大会として開催される多くの米国およびヨーロッパの学術研究集会がほとんどすべてキャンセル・中止されたことによる.本研究者個人の履歴としても,研究職を始めてから今日に至るまで振り返っても,海外に一切出なかった年度は初めて,という異常さであった.国内の学術研究集会は比較的早くオンライン開催の方向性を打ち出し,曲がりなりにも開催を維持したところが多かったが,海外の学会はオンライン対応もできず,中止するだけのところが多かったように思われる.そのため,海外学会はオンラインという選択肢すらなかったという結果であった.2021年度はこうした状況がいくらか改善しつつあるようなので,遅れを取り戻すべく努力したい.
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Strategy for Future Research Activity |
実績概要および進捗の項で記したように,2020年度は世界的パンデミックの中,研究集会・会合への出席など十分な研究活動を行うことができず,当初の計画を十分に達成できなかった感がある.2年目となる2021年度はそうした前年度の遅れを解消するべく努力したい. フェーズの順番を若干入れ替えて,[3]( ESG投資の基礎理論)を早めに着手することにしたが,2021年度はこの路線を続けたい.すなわち,ESG投資の基礎理論となるESGのための資産価格評価モデル(ESG-CAPM)の構築に向けてさらなる検討を続ける. 併せて,フェーズ[1](ESG評価指標の鑑定と統合指標の作成)とフェーズ[2](ESG情報開示の計量化と効果分析)も並行して進めたい.フェーズ[1]はRating-on-ratingとして,多くのサブ指標の重み付けの鑑定が必要となる.これにはAnalytic Hierarchy Process(AHP)の手法が有効であると考えられる.フェーズ[2]としては,二酸化炭素排出を中心に,各種の企業活動指標との関連について計量分析を予定し,その予備的分析を行う.
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