2022 Fiscal Year Annual Research Report
Economic Analysis and Survey of Multi-homing on Multi-sided Platforms
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20H01503
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
大木 良子 法政大学, 経営学部, 教授 (20612493)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若森 直樹 一橋大学, 大学院経済学研究科, 准教授 (50770921)
石原 章史 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (80643668)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | プラットフォーム / マルチホーミング / 競争政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、プラットフォーム市場における消費者の利用の実態をデータにより把握し競争のメカニズムを解明すること、またデータの分析結果を活かし、プラットフォーム企業に対する望ましい規制の考え方を整理することを目的としている。 2022年度も継続して消費者への大規模調査を実施し、新たなデータを得ることができた。加えて、2020年度から蓄積された複数年のデータを用いて記述統計的分析を行うことができた。 これらの成果を速やかに公表し、政策的な議論をする場として、2023年1月、大木が委員として参加している経済産業省「プラットフォームエコノミクス研究会」において研究報告を行った。この報告では、記述統計分析の結果の中から、主にマルチホーミングの実態、合併とプラットフォーム企業のエコシステムとの関係や競争への影響について説明し、関心の近い研究者および政策立案者から、今後の研究や政策的示唆の導出に向けた有益なインプットを得ることができた。本報告の概要については、経済産業省のWebページ上に掲載され、広く公開されている。 また、2023年2月には、競争政策に関わる弁護士・法学者を中心とした研究会である「競争法先端実務研究会」においても報告を行った。ここでは、特に弁護士や経済コンサルタントといった実務家からも、デジタルプラットフォームに対する競争政策的な評価(たとえば、合併が競争に与える影響や、マルチホーミングする消費者の割合と競争状態の評価等)のためには、本研究により構築されたデータおよびその分析が不可欠であるという意見が聞かれ、本研究への強い関心が示された。 以上のような継続的なデータの収集および記述統計分析に加えて、データが示すマルチホーミングの実態を反映させた理論研究も進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年の研究課題開始以降、毎年大規模な消費者アンケートを実施することができている。また、前年までの調査結果を分析しその結果を反映させて、翌年の調査を改良することを繰り返すことができている。これまで同様の調査研究が行われていない上、急速な市場の変化も見られることを考慮する必要があるため、研究を進める過程では困難な点も多いが、継続的な大規模調査を実施できていることにより、これらの困難を克服できていると考えている。そして、新奇性の高いデータ構築とその分析により、政府や企業がデジタルプラットフォームに関する継続的な市場調査の重要性を示すことができていること、また実際に調査を行う上で必要となる視点の整理や基礎的な分析のフレームワークについて議論の土台を築くことができたと考えている。 また、本研究期間内で、同様の調査を継続することにより、実証分析に足る複数年の充実したデータベースを築くことができると予想される。同時に、これまでにプロジェクト内外の研究者と積み重ねてきた議論を活用し、実証分析の視点も整理できている。 加えて、記述統計分析により把握された実態を反映させた経済理論モデルによる分析にも取り組むことができており、研究期間内の英文査読付き学術誌への論文投稿に向けて順調に作業を進めている。 以上から、当初の計画どおりおおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずこれまで継続して取り組んでいる理論研究について、その成果を論文として取りまとめ、2023年度内の公表を目指す。具体的には、限定コンテンツ配信に関する、コンテンツプロバイダーとプラットフォームの間の卸売契約形態のうち、「固定料金の卸売契約」と「消費者1人あたりの従量料金の卸売契約」とを比較し、競争政策的示唆を導出するモデルを構築しており、既におおよその結果を得ている。データ分析から明らかになった音楽配信や動画配信の市場における消費者のマルチホーミングの程度の実態とこの理論分析の結果とを組み合わせた検討により、充実した研究内容になることが期待される。2023年度中に査読付きの英文学術誌に投稿し、掲載されることを目指している。 また、データの記述統計分析から得られた知見を実証分析、理論分析それぞれに落とし込む作業を継続する。特に、マルチホーミングしているサービスの組み合わせを決定付ける要因を明らかにすることを目指している。現時点では、料金体系(無料・有料・抱き合わせ等)、製品差別化、エコシステム形成等が影響すると考えており、これらを考慮した理論モデルを構築したいと考えている。 また、以上のような研究を進める過程で、多くの記述統計分析を行っており、その結果自体、デジタルプラットフォーム市場を理解する上で非常に重要で有益な情報であると考えている。そのため、これらの記述統計分析の結果中心に、プラットフォームビジネス全体を理解するための研究書としてとりまとめることを予定しており、今年度はその執筆方針について議論を進め、具体的な作業計画を確定する予定である。
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Research Products
(1 results)