2022 Fiscal Year Annual Research Report
The development of household finance incorporated health anxiety
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20H01519
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
尾崎 祐介 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (80511302)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 一仁 関西大学, 社会学部, 教授 (50405487)
中村 恒 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80418649)
藤井 陽一朗 明治大学, 商学部, 専任准教授 (80635376) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 二変数効用関数 / 後悔 / 予防行動 / 健康リスク / コンテスト / 社会選好 / 経済実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績について理論を中心に述べる。将来の不確実な損失を予防する行動として、その程度を減少する自己保険、その確率を減少する自己防衛が知られている。これらの予防行動の分析は、保険経済学、家計ファイナンスの重要なトピックに位置付けられている。これらの予防行動に対して後悔がどのような影響を与えるのかについて分析した論文が Applied Economics 誌から刊行された。後悔を取り入れたモデルは二変数効用関数として分析されることが知られている(例えば、Gollier, 2020)。また、自己防衛を対象として、状態に依存したバックグラウンドリスクがどのような影響を与えるのかについての研究も進めた。この研究では、プロスペクト理論などを前提とすると、そのようなバックグラウンドリスクが自己防衛に対して単調な変化をもたらすわけでなく、増加させる場合と減少させる場合の両方があるという理論的に興味深い結果を得ることができた。この研究は、アメリカ保険学会のサテライトカンファレンスとして実施される Risk Theory Society という国際学会で報告することになっている。この国際学会は報告件数が全部で10件という競争的な国際学会であり、報告した場合のみ Risk Theory Society の会員となることができる。 また、近年では、予防行動の分析が、レントシーキングの分析と同様な数学的構造を持っていることが認識され、両者が結びつけられた一連の研究が進められている。昨年度から、レントがあいまいな場合、また、Keps-Porteus 型効用関数を持つ場合の分析を進めており、それらも論文としてまとめていく予定である。その他に、健康状態に関するバックグランドリスクを考えた予備的貯蓄の分析、また、公共財ゲームを用いた社会選好に関する経済実験などを進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理論に関しては順調に推移しているが、経済実験についてコロナウイルスの影響を受けている。特に、対面による経済実験の実施が研究期間の多くを占めるなか、それが原因で少し遅れているという評価になる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究に関して理論と実験に分けて述べていく。理論に関しては順調に進めているが、分析を終えているのに論文化できていない研究、あるいは、論文としてまとめているが、改訂が終わらずに投稿に至っていない研究などがある。例えば、今年度の研究実績の概要で挙げたコンテストの論文はその例である。それらを論文としてまとめていくことが今後の研究として優先すべきことである。同時に本研究課題である家計ファイナンスの重要なトピックであるポートフォリオに関する分析は、まだ、進めていない。今年度は予備的貯蓄に関する分析を進めたので、今後はポートフォリオに対する影響を明らかにすることが一つの重要な課題として残されており、それを示すことが本研究課題の理論部分の到達点になる。経済実験に関しては、コロナウイルスの影響もあり、後れている部分もあるので、一つずつ実施していく必要がある。二変数効用関数の経済実験に関しては、例えば、健康状態などは数量化が難しい部分もあり、実施の難しさがある。そこで、本研究課題では、二変数効用関数のなかでも社会選好を考えたうえで、数量化したうえで経済実験の実施を進めている。中断している部分も含めて、経済実験を実施して、それらを論文としてまとめることが必要である。それに加えて、数量化できない部分に関する経済実験も必要となる。先行研究の多くは、そのような場合は仮想的な状況に基づいて経済実験を実施しており、本研究課題もそれに習った形で実施していくことを検討している。
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Research Products
(4 results)