2021 Fiscal Year Annual Research Report
Redesign of International Management Strategy in the Age of Deglobalization: A Synecological Approach
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20H01541
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
洞口 治夫 法政大学, 経営学部, 教授 (20209258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 哲二 法政大学, イノベーション・マネジメント研究センター, 研究員 (20147010)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ディグローバリゼーション / 海外直接投資 / 多国籍企業 / 研究開発 / 製品開発 / コーポレート・ガバナンス / 労使関係 / 制度の進化プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績として英語論文、日本語論文、学会報告、学術書を発表した。洞口は査読付き英語学術論文“Global R&D location strategy of multinational enterprises,”Journal of Industry, Competition and Trade. with T. Susumago, vol.22, no.3-4,を共著で発表した。海外学会報告“Sustaining organizational excellence with leadership: The case of Honda Jet,” with V.B. Gargeya, R. Takenouchi、The Production and Operations Management Society (POMS) 2022を共同で発表し、洞口単著“Seven generations of the global value chain,” the Academy of International Business (AIB), 2022、同“The logic of betrayal for ethical corporate governance,”Academy of Management (AOM) Annual Meeting 2022, を発表した。洞口の英語単著、Foreign Direct Investment of Japanese Firms: Investment and Disinvestment in Asia, c.1970-1989. Tokyo: Academic Research Publication, 2022年7月を出版した。河村は単著論文「アメリカの戦後企業体制における労使関係の形成」『イノベーション・マネジメント』第20号、2023年を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題のテーマにかかわる理論の構築、制度の歴史、事例研究を進めてきた。理論の構築としては、コンピューター上の仮想市場におけるエージェント・ベースド・シミュレーションを行って多国籍企業の研究開発拠点立地選択を理論的に探究した。一定規模の仮想的市場に多国籍企業の子会社が立地競争を行うと、その市場の周辺地域に位置する場所には立地選択が行われない。これは低開発途上国は見捨てられた状態になることを含意している。また、仮想的市場への参入子会社の数が増加すれば市場内での飽和が起こり、新たな立地を求めた移動が困難になる。その状態を飽和均衡、それに準じた状態を準飽和均衡と名付けた。立地拠点が均衡するとジニ係数で示された不平等度は悪化する。つまり数理経済学的な均衡分析は動態分析よりも分配が偏った状態をモデル化していることになる。本研究課題のテーマにかかわる制度の歴史分析としては、アメリカの戦後企業体制における労使関係について論述し、その構造が確立する過程を跡づけた。また資本主義の進化プロセスを明示的にモデル化し、重商主義・産業革命・帝国主義・全体主義・冷戦・グローバリズム・ディグローバリゼーションの7つの進化過程を明らかにした。各段階を経過する年数は時代が下るほど短くなっており、その変遷は資本主義にとっての外部環境と考えられてきた戦争によって引き起こされた、という仮説を提示した。事例研究としてはホンダのビジネス・ジェット開発、三菱重工業と三菱航空機によるリージョナル・ジェットの開発とその頓挫に至る過程を追い、学会報告を行った。アメリカ現地調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスBA5型の感染拡大によって延期せざるを得なかった。しかし、英語著作、英語論文、日本語論文、海外学会報告、海外学会報告プロシーディングスの発表などの研究成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題「ディグローバリゼーションにおける国際経営戦略の再設計-群集生態学的アプローチ-」における事例研究としてはホンダのビジネスジェット開発があり、製品改良が行われると、競合他社のスペックとホンダの新製品のスペックが類似してくる、という問題がある。これを「プロダクト・リグレッション」と名付けて概念化するとともに実証的な裏付けを与えたい。コーポレート・ガバナンスの事例研究としては、日産自動車のカルロス・ゴーン氏を取締役会から排除したプロセスについての検証がある。取締役会の構成メンバーたちはゴーン氏を追い落とした後にもその職についていたが、ゴーン氏による有価証券報告書の記載が不十分であることは認識できていたはずである。認識していながらそれを指摘しない、という行動をとる理由を普遍化して理論的命題としたい。また資本主義の進化プロセスについての時代認識を行い、全体主義的な1930年代とロシアによるウクライナ侵攻が行われた2022年以降の時代との類似性と異質性を探求する。その際、いわゆる方法論的個人主義の普遍化過程について考察し、組織を主体とした哲学と、さらに、AIを組み入れた組織の哲学についての将来像を理論的に探究したい。アメリカの戦後企業体制における労使関係については、理論的かつ歴史的な探究を継続し、資本主義の変異プロセスとして概念化するとともにディグローバリゼーションに至る道筋を議論する。2021年から2022年にかけて全世界的な半導体不足がみられたが、ディグローバリゼーションの視角から、その要因をまとめる。自動車産業ではEV化が進展しており、アメリカ、日本、中国、台湾、韓国の多国籍企業の動向を視野に入れつつ、モーター製造、電池製造、自動運転などの分野とともに、調査を行いたい。特に、ニオ社、リビアン・オートモーティブ社はテスラ社を追随するEV自動車製造メーカーであり興味深い。
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