2020 Fiscal Year Annual Research Report
限界集落のコミュニティ・オーガナイジング実装と地域住民のエンパワメント評価研究
Project/Area Number |
20H01602
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Musashino University |
Principal Investigator |
渡辺 裕一 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (70412921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 亮次 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任教授 (00633116)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コミュニティ・オーガナイジング / 実装 / 1対1 / 対話 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の取り組みとしては、コミュニティ・オーガナイジングの実装について、主に取り組んだ。新型コロナウイルスの影響を受けにくい、現地の機関にコミュニティ・オーガナイジングの実装を再委託し、担当者2名と研究者とは週1回1時間~1時間半のミーティングを行い、地域の現状の把握とコミュニティオーガナイジングの実装の状況確認に取り組んだ。 現地の担当者には、すべての地域住民(約260人)との1対1の対話を繰り返すよう依頼した。2人の担当者はともに、新たに当該地域に配置された。一からオーガナイザーとして限界集落に入り、地域住民との関係構築に取り組み、限界集落における問題解決に参画する地域住民を見つけ、動かし、組織化していくきっかけとなる取り組みが求められた。 1対1の対話の成果として、はじめに、高齢者の存在に焦点が当たりがちな限界集落にあって、子どもたちや子育て中の親世代の力が潜在化していたことが見えてきた。1対1の対話が地域への関心を高めるプロセスをスタートさせるきっかけとなり、子どもクラブの活動と結びついた。次に、地域にはインフォーマルな組織・団体が複数存在しているが、諦め等により、力を発揮できていないことが見えてきた。また、フォーマルに組織されたグループも、「集まるだけ」という状況が続いていたが、オーガナイザーとのかかわりの中で、姿勢に変化が認められつつある。三つ目に、高齢者は当初、「困ったことはない」「膝が痛いだけ」と繰り返してばかりであったが、徐々に担当者に対して困りごとを伝えるようになった。そして、「介護保険サービスを利用するようになったら、集落から出ていかなくてはならない」「介護保険サービスを使ったらもうだめ」という考え方が広く認識されていることが見えており、パワーレス状態にあることも確認された。これらのことが、オーガナイザーの配置と活動により、確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
はじめに、2020年度からコミュニティ・オーガナイジングの実装としてオーガナイザーを配置する計画であったが、新型コロナウイルスの感染拡大により叶わず、2021年度4月からの実施となった点で、遅れている。現在、コミュニティ・オーガナイジングの実装については、現地の団体への再委託により、着実に進行しつつある。 同様に、評価に必要なデータの収集も遅れている。配置したオーガナイザーによる質的なデータ収集は、現在、進行中である。 また、2009年から2019年に収集したデータをベースラインにして、オーガナイザーの配置によるエンパワメントを評価する計画であったが、研究計画当初予期していなかった新型コロナウイルスの感染拡大により、地域住民の考え方やパワーに大きな影響があった可能性がある。改めて現時点(2022年度)での全住民のデータ収集の必要性について、検討を進めている。 以上により、「やや遅れている」と判断されるものの、状況の変化に応じて、柔軟に研究計画の見直しを行い、研究目的の遂行に向けて着実に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
はじめに、2022年度においては、配置しているオーガナイザーとの週1回のミーティングを行い、実装状況について確認を継続する。そのミーティングを通して、オーガナイザーとの関係において、地域および地域住民にどのような変化がもたらされているのかを観察する。 研究成果については、2022年度はすでに2件の学会発表にエントリーしており、研究期間何ではあるものの、成果の公表に向けて積極的に取り組んでいく。 データの収集については、現在進行中の地域住民へのインタビュー調査(質的調査)を終了させるとともに、新型コロナウイルスの感染拡大による影響を踏まえて、全住民へのデータ収集に取り組む必要性について検討する。
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Research Products
(3 results)