2020 Fiscal Year Annual Research Report
仮想空間を媒介とした日本文化に関する状況学習支援環境に関する総合的研究
Project/Area Number |
20H01733
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
稲葉 光行 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80309096)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細井 浩一 立命館大学, 映像学部, 教授 (00268145)
THAWONMAS Ruck 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (50320122)
中村 彰憲 立命館大学, 映像学部, 教授 (70367134)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 状況学習 / 協調学習 / シリアスゲーム / メタバース / 日本文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的の1点目は、近年急速に発展している仮想現実(VR)技術を活用し、日本文化に興味を持つ学習者が、仮想空間と現実空間を行き来する創発的な対話を通じて日本の文化や習慣を学ぶことができる、「仮想空間を媒介とした日本文化学習環境」を実現することである。2点目は、仮想空間内の代理的な身体である「アバター」や、VRヘッドセット/コントローラなどのデバイスを用いて、従来のWebベースのeラーニングでは困難であった、仮想空間を媒介とする「状況学習」の支援モデルを実用化することである。3点目は、協調的な遊び、シリアスゲーム、およびゲーム・ベースド・ラーニングの概念を融合させた「協調的シリアスゲーム」の実用的なモデルを確立し、その有効性を検証することである。 研究初年度は、多様な仮想空間関連技術を用いて、日本文化や地域文化に関する理解を促進するための技術と手法に関する基礎的調査に取り組んだ。具体的には、(1)AIを用いたマインクラフト上での歴史的町並みの自動生成に関する研究、(2)Unreal EngineとVRヘッドセットを用いた仮想展示に関する研究、および(3)サンドボックス型ゲーム環境を用いた日本文化・地域文化の学習実験、に取り組んだ。 特に学習実験では、西日本の2箇所の高校、2つの大学の学生・院生、日本語教育NPOスタッフなどと協力し、学習実験を進めた。基本的には参加者が独自にコンテンツをデザインし、それらをネット上で共有し話し合うことで、互いの成果を展示し、相互に学びあう試みを行った。これらの参加者の学習過程の観察、および参加者に対するインタビュー調査の結果から、仮想空間やコンテンツを自ら「デザイン」することができるサンドボックス型ゲーム環境は、学習者による自発的な情報収集や課題発見といった「アクティブ・ラーニング」への強い動機づけとなる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度では、多様な仮想空間関連技術を用いた日本文化や地域文化の学習支援のために、主に3つの方向性での基礎的調査に取り組んだ。具体的には、(1)AIを用いたマインクラフト上での歴史的町並みの自動生成に関する研究、(2)Unreal EngineとVRヘッドセットを用いた仮想展示に関する研究、および(3)サンドボックス型ゲーム環境を用いた日本文化・地域文化の学習実験、である。 (1)AI技術による仮想空間生成に関しては、Pythonスクリプトを用いてMinecraftの任意のマップに対して日本の伝統的な村を自動生成する仕組みを実装した。またこの成果はゲームAI大会に提出された。 (2)Unreal EngineとVRヘッドセットを用いた仮想展示に関しては、日本の江戸時代文化に関する映像撮影用小道具の仮想展示空間を用いて、解説者と学習者が対話的に学ぶことができる仕組みの試作を行った。 (3)サンドボックス型ゲーム環境を用いた日本文化・地域文化の学習実験では、仮想空間プラットホームとしてSecondLifeやMinecraftなどを利用した実験に取り組んだ。これらは、京都府八幡市教育委員会が主催する「八幡市子ども会議」に参加する高校生、および島根県立隠岐高校の有志が集まるサークル、京都府および大阪府の大学で学ぶ学部生および大学院生、そして外国人の日本語学習支援を行うNPOなどの協力を得て行った。学習実験の結果の分析から、仮想空間やコンテンツを自ら「デザイン」することができるサンドボックス型ゲーム環境が、学習者による自発的な情報収集や課題発見といった「アクティブ・ラーニング」への強い動機づけとなる可能性が示された。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の基礎的調査や学習実験の結果を踏まえて、研究2年度は、仮想空間技術とゲーム環境を組み合わせた「状況学習」のためのインタラクション技術研究、「デザイン・ベース学習」を支える基盤としてのサンドボックス型ゲーム環境の可能性の検討、およびそれらを用いた効果的な日本文化学習モデルの政策に取り組む。 (1)AI技術による仮想空間生成に関しては、日本の文化的な知恵や価値観に関わるコンテンツやルールを組み込むことで、遊びながら日本文化を学ぶことができるようなゲーム空間の生成や、多様な年代を想定したコンテンツの創出を試みる。 (2)Unreal EngineとVRヘッドセットを用いた仮想展示に関しては、初年度に開発した江戸時代文化に関する仮想展示空間を拡張し、解説者と学習者が、現実空間に近い文化的文脈を持つ仮想空間に同時に参加し、対話しながら協調学習を進めることができる環境の実現の可能性を探る。 (3)サンドボックス型ゲーム環境を用いた日本文化・地域文化の学習実験については、ネット上の日本の歴史・文化一般に関わる話題だけでなく、国内外の地域における歴史的・文化的資源に関わるコンテンツを対象とした状況学習にも取り組む。またこれらの活動を通して、日本の歴史・文化一般に対する理解のみならず、地域の歴史・文化に関わる多様な価値観や伝統に対するアウェアネスが促進されるかどうかの検証を行う。これまでの学習実験は、留学生も含めて日本国内の学習者に限定していたが、研究2年度は、海外の教育・研究機関と協力することで、仮想空間を媒介とした日本文化や地域文化に関わる状況学習の可能性に関する検討を進めていく。
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