2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H01755
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
小田 亮 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50303920)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内藤 淳 法政大学, 文学部, 教授 (20401648)
中西 大輔 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (30368766)
平石 界 慶應義塾大学, 文学部(三田), 教授 (50343108)
松本 晶子 琉球大学, 国際地域創造学部, 教授 (80369206)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 道徳 / 適応 / 進化 / 進化シミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、道徳の本質は集団内の対立解消にあるとする道徳進化仮説について、その理論的妥当性と、理論から予測される心理的基盤の存在を、シミュレーション研究と実証研究の両面から明らかにすることである。20年度は、道徳的主張におけるフリーライダー問題を検討するため、理論・シミュレーション班において「二次の道徳的非難」をシミュレーションに組み込んだ時の集団動態を検討した。また、道徳の重要な構成要素である利他性を対象に、その心理的基盤の進化についての研究を概観し、総説として発表した。 実証班においては、コストがかかるような条件での主張の強さを簡便かつ定量的に測定する「チェックボックス法」の妥当性について、質問紙調査を用いて検討した。人は価値のある相手には価値のない相手よりもコストの高い謝罪をする可能性が高いという先行研究と同様の手法を用い、参加者に謝罪のコストの測定方法としてWeb画面上の10×10個のチェックボックスを塗りつぶしてもらった。その結果、チェック数に影響した主要な要因は相手の道具的有用性となり、先行研究の結果を再現することができた。チェックボックス法が主張のコストの測定方法として妥当であることが示された。 また、感情の進化という視点から道徳について検討するため、質問紙調査を実施した。参加者に、道徳基盤理論に基づく5種類の道徳的違反行為をしているところを第三者に観察されたと想像してもらい、両親、親しい友人、近所の人、見知らぬ人に目撃されたときの罪悪感の強さを記述してもらったところ、罪悪感の強さは、関係する道徳的基盤にかかわらず、見知らぬ人に目撃された場合に有意に低かった。しかし、目撃者の種類による影響は道徳基盤ごとに異なっていた。この結果は、罪悪感が私たちの道徳的行動を誘導し、協力を達成するために機能しているという仮説を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、20年度、さらに繰越をした21年度についても当初計画していた実験室実験や打ち合わせが実施できなかった。しかしながらオンライン等を活用することにより、理論・シミュレーション班、実証班ともに一定の成果を挙げ、学会において発表し、学術論文として刊行することができた。そのうち3本の英文論文は国際学術誌に掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
理論・シミュレーション班は、これまでに設計を進めてきたDynamic Coordination Theoryに基づく道徳進化シミュレーションについて倫理学や生態学の視点から妥当性を検討し、理論的視点ならびに実社会との対応という視点から拡張する。具体的には、これまで検討してきた階層構造をシミュレーションに組み込んだ時の集団動態について、倫理学と生態学の視点から改善点を検討する。実証班は道徳的非難と不作為バイアスに着目した調査・実験を実施し、Dynamic Coordination Theoryの妥当性と発展性について実証的に検討する。新型コロナウイルスの感染拡大状況は未だ予断を許さず、対面による実験が実施できない可能性があるが、オンラインによる調査や実験を適切に用いて補っていくことで対応する。成果については随時学会や学術誌等において発表する。
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