2020 Fiscal Year Annual Research Report
デイケアをハブとする認知症の人や介護者へのシームレスな包括的心理介入システム開発
Project/Area Number |
20H01765
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山中 克夫 筑波大学, 人間系, 准教授 (50282314)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 亨 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (10344144)
武藤 崇 同志社大学, 心理学部, 教授 (50340477)
西田 健次 東京工業大学, 工学院, 特任准教授 (50344148)
河野 禎之 筑波大学, 人間系, 助教 (70624667)
野口 代 東大阪大学短期大学部, その他部局等, 助教 (80744854)
新井 哲明 筑波大学, 医学医療系, 教授 (90291145)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 認知症 / デイケア / シームレス / 心理介入システム / 介護者 |
Outline of Annual Research Achievements |
認知機能改善のためのデイ活動プログラムの開発に向けて、これまでの認知リハビリテーションのエビデンスに関するレビューを行った。そこでは、シームレスな支援のためには、包括的リハビリテーションの観点が重要である点も述べた。 認知症の人の社会的健康の促進では、地域社会に参加できる体制整備が重要となる。そこで、認知症の人にとって望ましい地域作りを行う上で、心理職がなすべき事柄をまとめ発表を行った。さらに、地域の拠点を探るという意味で、地域密着型介護老人福祉施設における地域交流スペースに着目し、その活用の実態や活用上の配慮、今後の活用の可能性について、関東全域の施設を対象とする調査結果をまとめた。 また、本プロジェクトでは、家族会等を基点とする家族介護者の心理的ケア・サポートのプログラムやシステムを開発することになっている。開発を行う前に、認知症の人と暮らす家族自身が近隣や地域の人との関係についてどう感じているのか、同時に「認知症」という呼称に抱く不快感の程度について調査を行いまとめた。そこでは、両者の関係についても構造的な解析を行った。 上記の研究では、認知症という呼称の印象について、「痴呆」というかつての用語との比較も行った。国際的にみれば、このような認知症に関する用語の変更は、行動・心理症状に関連するものにもみられ、さまざまな用語が存在する。そこで、そのような用語の主要なものについて概念をまとめ、変更の背景にはラベリングの改善を意図したものもあることや、そうしたラベリングをなくすためには、有効なケア技術の普及や社会参加の仕組み作りが必要であることを述べた。 また、介入の効果測定のための評価法開発では、情動の客観的測定を行うために開発した基盤(笑顔度検出器)について、喜び以外の表情の測定の可能性や、表情に加え声も合わせた感情推定の可能性について発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全国的にコロナウイルス感染拡大への対策が行われる中、研究代表者や研究分担者の地域においても、アクセス可能なフィールドが極めて限定されている状況にある。しかし、そのような状況であっても、進められる事柄について話し合い、今後のプログラムやシステム構築のための原理や基盤となる点に関しては、研究業績に述べたような発表や投稿ができた。 現在までの主な進捗状況として、まず「シームレスな認知機能改善のための新たなデイ活動プログラムの開発」に関して、既存のプログラムについて改善点を検討し、試案の一部を作成した。「自助グルーブで実施する社会的健康促進プログラム開発」について、実際の事業所の管理者やスタッフの意見をもとに、認知症の人の自助や地域社会への参加に向け、デイサービスのタイプごとに実施可能な体制整備の枠組みについて検討を行った。 「家族会で実施する介護者の心理的ケア・サポートプログラムの開発」に関しては、研究開始時では、認知症の行動・心理症状への対応、ストレスの軽減、生活や人生の展望を念頭に置いたプログラム構成を考えていたが、開発の話し合いを進める中で、広く家族介護者にニーズ調査を行い、それらの知見を今後の枠組みに反映していく結論に至った。 「介入の効果測定のための評価法開発」に関しては、情動の客観的測定を行う基盤(笑顔度検出器)の妥当性の検証データの一部を収集した。また、基盤を使用性や有用性が高く汎用性がある機器にするための改良、他の表情の測定の可能性、表情に加え声も合わせた感情推定の可能性について検討した。その他にも、グループホームや特別養護老人ホームの環境を踏まえたQOL尺度の標準化調査の準備や、認知的活動や社会的活動の日常的評価の試案作りに向けた既存尺度のレビューや尺度構成に関する検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず「シームレスな認知機能改善のための新たなデイ活動プログラムの開発」に関しては、これまで試案の一部を作成したが、次年度では他の試案の部分についても段階的に作成していく。そして、それらに対する本人、家族、スタッフの意見や、試行結果をもとに実行可能性を検討し、その結果をもとに内容や手続きの調整を行っていく。また、地域におけるデイサービスのニーズや体制の状況についても調査を行っていく。 次に「自助グルーブで実施する社会的健康促進プログラム開発」では、これまで作成したデイサービスのタイプごとの体制整備に関する枠組みをもとに、デイサービスの状況について調査し、枠組みを改良するとともに、地域のリソースの現状やボトルネックを明らかにし、地域特性に応じたプログラム開発の基盤データを得る。「家族会で実施する介護者の心理的サポート・ケアプログラムの開発」では、家族介護者の心理的サポートやケアのニーズについてインターネット調査を行い、その結果をもとにプログラムの枠組みを構築していく。「介入で必要な新たな評価法の開発」では、情動の客観的測定を行う基盤(笑顔度検出器)の妥当性の検証のためのデータ収集や、使用性や有用性が高い検出器への改良を引き続き行っていく。また、日頃の認知的活動や社会的活動の形成的評価について、簡便で客観的にチェックできる尺度の試案を作成する。加えて、グループホームや特別養護老人ホームの環境を踏まえたQOL尺度の標準化に向けたデータ収集を開始する。 なお、これらの計画はコロナの状況に応じ調整しながら進める。
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Research Products
(20 results)