2021 Fiscal Year Annual Research Report
時空間的要約抽出に基づいた適応的知覚処理方略の解明
Project/Area Number |
20H01781
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
木村 英司 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (80214865)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一川 誠 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 教授 (10294654)
溝上 陽子 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (40436340)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 実験系心理学 / 知覚 / 適応 / 順応 / 要約的処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
時空間的な要約処理過程に関する研究として、複数の顔刺激から平均表情を抽出する過程に顔色が影響するのかを検討し、顔色の操作により複数顔に対する怒り感情の認識が変化することを見出した。ただし、顔色による変調効果は、中性顔では生じず怒り顔を操作した場合にのみ生じた。単一顔実験との比較から、この結果は、怒り顔が平均処理において強く重みづけられているという解釈からは説明できず、顔色により個々の顔の情動強度が変調され、その後に平均されることが示唆された。 外界の知覚的安定性を維持する過程に関する研究として、自然画像を用いて彩度順応の時空間的影響を調べた結果、数十秒以下の短時間で彩度順応が安定することが示唆された。実物体を用いた照明と物体の見えの検証では、黒体放射軌跡に沿った方向の照明色変化の方が不自然な色変化方向より色恒常性が高い傾向が得られた。また、周囲条件が色コントラスト知覚に与える影響、照明の分光強度分布や配光が物体の質感や顔の見えに与える影響など、様々な周囲環境と見えの関係について検証した。順応による色対比効果の増強現象に関しては、誘導野に対する順応の影響による色誘導は、誘導野と検査野の境界が明瞭な場合に阻害されることを示した。 また、多様な情報源からの距離情報は統合後に「大きさ距離不変仮説」に従って大きさ知覚に影響を及ぼすことを見出した。視聴覚刺激の開始か終了の一方のみに、試行ごとにランダムに非同期を導入した場合、その非同期を主観的に縮小する時間的再較正は生じないことを見出した。容器の色が飲料に対する味覚に及ぼす影響を調べた。容器の色と味との主観的調和や連合学習に基づいて味覚が変動することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響により、積極的に実験参加者を募りにくい状況であったため、実験のペースが予定より遅れた。特に、2021年度の後半に計画していたいくつかの実験に関しては、実験参加者を募ることがまったくできなくなってしまったため、研究を延期し、研究費も繰り越すこととなった。 研究発表に関しては、2020年度に引き続き、中止、延期になった国内学会、国際学会が複数あり、学会の場での情報の発信や収集も予定していたほど行えなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究全体の進展がやや遅れているが、2022年度は繰り越した研究費を活用して特任研究員を雇用し、外界の知覚的安定性を維持する過程の検討や知覚の内的整合性を維持する過程に関する検討を集中的に進める予定である。また、研究代表者および研究分担者が主担当となっている時空間的な要約処理過程に関する研究やその他の研究に関しても、研究を進め、学会発表や論文の投稿も積極的に進めていく。 なお、2022年度に繰り越した研究費に関しては、それを活用して特任研究員を雇用し、時空間的な要約処理過程に関する研究を進めた。2022年度の半ばからは、新型コロナウィルス感染症の影響も弱まったことから、比較的スムースに実験を進めることができた。
|