2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H01790
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
阿部 知行 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 准教授 (70609289)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 分岐理論 / 特性サイクル / エタール・コホモロジー / 無限圏 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は本研究計画において重要な年になった。研究計画の一つの目標であった分岐理論のホモトピー論的再構成に成功した。 Xを正標数体上の多様体とし、その上のエタール構成可能層をFとする。斎藤はFの特性サイクルと呼ばれる普遍量を定義した。特性サイクルをよりホモトピー論的に再構成するのが一つの目標であった。そのために良い「テスト関数列」をとり,それに付随する0サイクルを近接隣体の理論を用いて構成する。この出てくる0サイクルがテスト関数列の選択によらないことをホモトピー論を用いて証明するというのが大筋であった。 まず必要になってくるのはこれらの操作を定式化することである。無限圏を用いる場合セットアップがとても大切であり、初めからすべてのデータを固定しておく必要が生じる。そのため定式化が非常に大切である。そのため「localization system」という概念を導入し、エタール層がlocalization systemを成していることを証明した。localization systemはテスト関数の選択の自由度などを定式化したものであり、エタール層がlocalziation systemを成すことを示すためにKedlayaの準安定還元定理の手法を用いるなどとても深い考察が必要である。 一方でChow群などはtrace射を持っており、これらの情報は「reversible coefficient」という概念を導入することで定式化した。主定理はlocalization systemからreversible coefficientへの射は極めて簡単な構造を持っているというものである。結果、特性サイクルの構成は台の次元が0なエタール層の特性サイクルの構成に自動的に帰着され、それはほぼ一意的に決まるというように特性サイクルが構成できる。 論文は現在執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績で記したように特性サイクルのホモトピー的構成ができると,特性サイクルの押し出し公式を示すことができる.これはGrothendieck-Ogg-Shafarevich公式をGrothendieck-Riemann-Roch型の定理に拡張したものととらえることができ,一つの大きな到達点といえる.当初から無限圏などの先端的な道具を用い証明しようと考えていたが,無限圏の理論をホモトピー論とほとんど関係のない文脈で応用する研究は数が限られており,かなり挑戦的な目標であったといえる.この目標に到達する道しるべが付けられたことは大きな成果であり,研究が大いに進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の最も重要な課題は当然のことながら論文を書くことである.論文を書き終えたのちはこれまでに得た知見でほかに応用ができないかを模索する予定である.例えば,これまでの研究では高次元底の近接隣体関手を用いることにより新たな「連続性」の概念を導入した.分岐理論ではセールによる(高次元の)アルティン指標の幾何学的実現の問題などが残されており,この連続性の手法が応用できないかと思っている.それ以外でも戸田・MaulikによるGV普遍量の変形普遍性の問題などにも応用できる可能性を模索している.いずれにせよ近接隣体の変化を捉える手法はこれから重要になっていくものと思われ,今後の応用を期待しており,これまでの実績の論文を書き終えた際はその応用について研究していく方針である.
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