2020 Fiscal Year Annual Research Report
New developments of computer-aided research in algebraic geometry
Project/Area Number |
20H01798
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島田 伊知朗 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10235616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 俊一 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10284150)
金銅 誠之 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (50186847)
高橋 宣能 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60301298)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | エンリケス曲面 / K3曲面 / コブル曲面 / 双曲格子 / 自己同型群 / BPS numbers |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の島田は,S. Brandhorst との共同研究により,,ADE タイプが tau の有理2重点をもちかつある種の genericity 条件をみたす エンリケス曲面のクラスを導入し,(tau, taubar)-generic エンリケス曲面と名付け,その自己同型群のネフ錐への作用の基本領域の体積に関する簡明な公式を得た.またこれらのエンリケス曲面上の非特異有理曲線および楕円ファイブレーションの集合への自己同型群の作用も詳しく調べた.このエンリケス曲面のクラスは,1980年代に Barth-Peters の研究した generic エンリケス曲面や Dolgachev-Cossec の研究した generic nodal エンリケス曲面を包摂する非常に広いクラスである.この結果は,論文 Automorphism groups of certain Enriques surfaces(to appear in Foundations of Computational Mathematics)にまとめた. 研究分担者の金銅は Coble 曲面の自己同型群の研究を進め,自己同型群が有限となる Coble 曲面の完全な分類を与えた.これは 1980年代の金銅--Nikulin による自己同型群が有限となるエンリケス曲面の分類の Coble 曲面への拡張である.また,T. Katsura および G. Martinと正標数における Coble 曲面および エンリケス曲面の分類をすすめた. 研究分担者の高橋はカンドル上の加群の研究をすすめ,Lie-Yamaguti 代数の表現との関連を調べ,また J. Choi, M. van Garrel,S. Katz, Sheldon と 開代数曲面上の BPS numbers について研究をおこなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者の島田は,S. Brandhorstとの共同研究により非常に広いクラスのエンリケス曲面に対して,ネフ錐上の基本領域の体積に関する非常に簡明な公式を得ることができた.これは計算機による部分的な場合の計算結果から予想され,その後すべての場合に対して計算機によらない証明と計算機による確認が与えられたものである.さらにエンリケス曲面の自己同型群の非特異有理曲線への作用の軌道の個数についても,ほとんどの場合に成立する公式を得た.これに対しては計算機によらない証明はまだ与えられていない.いずれの結果も,計算を開始した時点ではまったく予想していなかったものであり,計算機による実験の有用性を鮮やかに示すことができた.さらにこの研究の計算を実行するにあたり,多くのツールを準備し,その結果 Borcherds 法のアルゴリズムのテンプレート化を行うことができた. 研究分担者の金銅は正標数における Coble 曲面およびエンリケス曲面の研究を着実にすすめ,特にもっとも難しい標数 2 の場合に重要な結果を得た.また,I. Dolgachev とのエンリケス曲面に関する共著の執筆をすすめた.この書籍はエンリケス曲面についてのもっとも基礎的な文献になると期待される. 研究分担者の高橋の研究は,高橋自身による 2000 年代初期の先駆的な研究に新たな応用が見出されたものであり.J. Choi, M. van Garrel,S. Katz, Sheldon との共著になる3篇の論文は,非常にレベルの高い雑誌に受理されている.
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Strategy for Future Research Activity |
一般に計算機プログラムのテストのためには多くのサンプルが必要である.K3 曲面やエンリケス曲面に関する多くの計算機プログラムのテストと改良をできるだけ効率よく行うために,いろいろな性質を持つ偏極 K3 曲面の格子理論的データをある意味で「ランダムに」生成するプログラムを作る.例えば,大きな階数のモーデル-ヴェイユ群や複雑な特異ファイバーをもつ楕円 K3 曲面のネロン-セヴェリ格子をできるだけたくさん,かついろいろな種類のものが満遍なく生成されるプログラムを作りそれらの自己同型群を調べるということを目標とする. Borcherds 法は自己同型群の生成系を格子理論的に求めるものである.自己同型群を幾何学的に記述するためには,格子のアイソメトリーとして与えられた生成元を幾何学的に与えられた自己同型の積の形に書くという作業を行わなくてはいけない.そのために幾何学的自己同型をできるだけたくさん作る必要がある.そこで K3 曲面上の楕円ファイブレーションを用いて幾何学的自己同型を多数構成する方法を開発する.またK3 曲面のシンプレクティック自己同型に関する現在までの多くの研究の蓄積を格子理論的なアルゴリズムに応用し,幾何学的自己同型を構成する. K3 曲面やエンリケス曲面の自己同型群に関するいままで作成した各種の計算機プログラムを既約正則シンプレクティック多様体の自己同型群に応用するために,既約正則シンプレクティック多様体に関する情報を収集する. さらに Borcherds 法をもちいて,さまざまな Coble 曲面の自己同型群を計算する.
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