2021 Fiscal Year Annual Research Report
New developments of computer-aided research in algebraic geometry
Project/Area Number |
20H01798
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
島田 伊知朗 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10235616)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 俊一 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (10284150)
金銅 誠之 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (50186847)
高橋 宣能 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (60301298)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | K3曲面 / 自己同型群 / 数値的ネロン・セヴェリ格子 / 楕円ファイブレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続き,K3曲面の自己同型群の生成系を数値的ネロン・セヴェリ格子のデータから計算機を用いて決定する方法の研究を行った.K3曲面の自己同型群の生成系は,数値的ネロン・セヴェリ格子の直交群の元の集合として,一般化された Borcherds-Kondo 法により求めることが(原理的には)できる.しかしこれらの生成元の幾何学的意味を数値的ネロン・セヴェリ格子への作用だけから知ることは一般的に難しい問題である.そこで,自己同型群の生成系を幾何学的に実現するために,切断を持つ楕円K3曲面の Mordell-Weil 群の元の数値的ネロン・セヴェリ格子への作用を計算する方法を開発した.また,生成系により与えられた自己同型群の部分群に与えられた別の元が含まれるかどうかを調べる方法を開発した.この方法は,いままで見つかっている生成系に含まれる元のランダムな語を作ってあらたに見つかった別の自己同型を近似し,その近似の精度を上げていくという確率的なものである.さらにK3曲面上の楕円ファイブレーションを自動的に見つけていくプログラムを書いた.これらの方法を組み合わせることで,K3曲面の自己同型群の生成系で,各元の幾何学的な意味がわかっており,かつ冗長度の小さなものを作ることが可能になる. 例として,トーラス型の6-cuspidalな6次曲線に沿って分岐する射影平面の二重被覆として得られるK3曲面の自己同型群の幾何学的生成系を求めた.この生成系は 463+360 個の元からなる.このK3曲面はBorcherds- Kondo 法によるネフ錐の有限多面体への分割への自己同型群の作用が複数の軌道を持つ(すなわち simple Borcherds type ではない)という意味でも興味深い例である. このアルゴリズムは他にも広く応用を持つことが期待される.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今までに蓄積した,K3曲面およびエンリケス曲面の自己同型群を求めるための Borcherds-Kondo 法に関するアルゴリズム群に多くの改良を加え,適用範囲を拡張することができた.研究実績に記述した,K3曲面上の楕円ファイブレーションの構造を用いて幾何学的な意味がはっきりとわかっている自己同型を見つけるアルゴリズム以外にも,数値的ネロン・セヴェリ格子の階数 26 のユニモジュラー双曲的偶格子(コンウェイ格子)へのいろいろな埋め込みを求めるために,与えられた genusに属する正定値格子を Kneser の近傍法により全て求めるプログラムを実装した.いくつかの実験結果によれば,一般化された Borcherds-Kondo 法が終了するするまでのステップ数(すなわちネフ錐の有限多面体への分割への自己同型群の作用の軌道数)はこの埋め込みに大きく依存することが判明した.したがって,埋め込みを適切に選択することにより,自己同型群の計算がさらに高速になることが期待される.さらに,K3曲面のネフ錐の構造を調べるための補助的なアルゴリズムを数多く作った.例えば,数値的ネロン・セヴェリ格子の与えられたベクトルがネフ錐に含まれるかどうか,与えられたノルム -2のベクトルが非特異有理曲線のクラスであるか,などの判定を行うプログラムを書いた.これらのアルゴリズムは自己同型群の計算結果をチェックする時に有効に使用される. この結果,関連するアルゴリズム群が非常に巨大になったので,整理を行うとともに,その理論的な背景を講義ノートの形でまとめた.
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Strategy for Future Research Activity |
一般化された Borcherds-Kondo 法が終了するするまでのステップ数は数値的ネロン・セヴェリ格子のコンウェイ格子への埋め込みに大きく依存する.少ないステップ数で終わるためにはどのような埋め込みを使えばよいのかを探求することが次の課題となる. K3曲面は物理の様々な曲面にあらわれ,多くの研究がなされている.例えば固体物理学の非常に単純化されたモデルから導出される Apery-Fermi 3-fold は 保型形式の理論や数論的観点からみて非常に美しい構造をもったK3曲面の族である. また Bhabha 散乱や Drell-Yan 散乱に付随したファインマン積分の計算においてピカール数の高いK3曲面が現れ,性質が詳しく調べられている.このような物理から現れるいくつかのK3曲面の自己同型群とネフ錐を詳細に調べる. また,近年,研究分担者の金銅により自己同型群が有限となる Coble 曲面のクラスが決定された.これは自己同型群が有限となるK3曲面およびエンリケス曲面のクラスの決定という,1980年代および90年代の金銅の仕事の延長である.一方,島田は Brandhorstとの共同研究により,generic なエンリケス曲面の自己同型群の計算に関する Barth-Peters の仕事を拡張した.したがって, 次の課題は generic な Coble 曲面の自己同型群を計算することである. 来年度は出来るだけ多くの研究集会に参加し,また海外より何人かの共同研究者を日本に招聘する.
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