2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20H01802
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井関 裕靖 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (90244409)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 剛史 鹿児島大学, 理工学域理学系, 准教授 (60467446)
納谷 信 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (70222180)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 剛性 / 調和写像 / Poisson境界 / 非正曲率距離空間 |
Outline of Annual Research Achievements |
群が剛性をもつとは、その群の適当なクラスの距離空間(例えば非正曲率距離空間)への作用がある意味で一意的であることをいう。長らくこのような性質はLie群の格子などの特別な群が有するexoticな性質だと考えられてきた。Lie群の格子の剛性を導くにあたっては、非正曲率空間の無限遠境界の間の写像(境界写像)を用いる手法が有効である一方、格子が自然な作用をするRiemann対称空間からの同変調和写像を用いる手法も非常に有効であった。本研究はこれらの一見異なるアプローチを、ランダム・ウォークが与えられた(Lie群の格子とは限らない)有限生成群上の離散的同変調和写像が適切な仮定の下で境界写像を誘導するということを示すことにより統合し、有限生成群の無限遠境界の幾何学の視点から剛性という現象の根源を明らかにすることを目指している。 2020年度の基本的な研究テーマは、ランダム・ウォークが与えられた有限生成群が非正曲率距離空間に作用するときにおける、その作用と同変な調和写像の存在とその挙動についてであった。その成果として、ランダム・ウォークが与えられた有限生成群Gが局所コンパクトな非正曲率距離空間Yに非自明な作用をするとき、有限生成群Gの(与えられたランダム・ウォークから定まる)Poisson境界からYの無限遠境界への境界写像が存在するか、そうでなければYの中に平坦部分空間が存在し、Gの作用がその平坦部分空間を不変にする、という予想を肯定的に解決することができた。今後は、Yが必ずしも局所コンパクトでない場合にもこの結果を拡張することを目指す。とくにYが有限なtelescopic次元をもつ場合が重要である. この場合の証明が完成した時点でこれらの成果を論文にまとめる予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナ感染症の感染拡大の影響で、研究分担者の納谷信(名古屋大学)および近藤剛史(鹿児島大学)と共同で取り組む研究に遅れが出ている。しかしながら、それ以外の単独で行う研究については、非常に順調に進んでおり、全体として「おおむね順調に進展している」と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当面の目標は、ランダム・ウォークが与えられた有限生成群Gが非正曲率距離空間Yに等長的に作用する場合における、Gの軌道に移植されたランダム・ウォークの挙動を明らかにし、次のいずれかが成り立つことを示すことである。 (1) GのPoisson境界からYの幾何学的無限遠境界へのそれぞれへのGの作用に関して同変な境界写像が存在する。 (2) Yの中にGの作用で不変な平坦部分空間が存在する。 上で述べたように、Yが局所コンパクトな場合については、この目標は達成されている。今後は、局所コンパクトではないが有限なtelescopic次元をもつYに対しても上記の成果を拡張することを試みる。上の(1)が成立しない場合、Yに移植されたランダム・ウォークの軌道の中で移動距離の増加幅が減少していくようなものが必ず存在する。(2)の平坦部分空間の存在を示すにあたっては、このような列(あるいはその部分列)が必ずYまたはその無限遠境界の点に収束することが重要であった。Yが局所コンパクトならば、Y内の任意の点列はYの幾何学的コンパクト化において収束する部分列を含むので、問題はない。しかし、Yが局所コンパクトではない場合、このような部分列の存在は非自明であり、この点の克服が望む拡張の成否に関わっている。問題の列は通常の意味では収束しないかもしれないが、超極限をとることにより、いわば、仮想的な収束先を与えることができる。仮想的な収束先が真の収束先でない場合には、繰り返しYの超極限をとることにより、収束先にあたる余分な集合がYに付加されていき、得られる空間は徐々に大きくなっていく。一方、Yが有限なtelescopic次元をもつ場合には、Yの超極限の次元は元のYの次元と一致するので、このような操作で空間が極端に大きくなっていくことはないはずである。このことに注目することで目標が達成できると考えている。
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Research Products
(1 results)