2023 Fiscal Year Annual Research Report
量子相転移動力学の基盤となるスピノールBEC中の位相欠陥の内部状態と動力学の解明
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20H01842
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
竹内 宏光 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 講師 (10587760)
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Project Period (FY) |
2021-03-01 – 2026-03-31
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Keywords | スキルミオン / ボース・アインシュタイン凝縮 / 自発的対称性の破れ / 量子渦 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請書に記載した課題[II]に関して,2023年度前期に思わぬ進展があったため,計画を大幅に変更して本課題を優先的に実施した.スピン1ボース・アインシュタイン凝縮体の強磁性相において,磁壁に平行なスピン流を印加することにより,流体力学で知られるケルビン・ヘルムホルツ不安性が発現し,渦スキルミオンが生成されることを以前の研究で示した.このようにして生成されるスキルミオンの多くは,半整数のトポロジカルチャージを持つ新種のスキルミオンであり,これはスピンテクスチャーに特異点を持つことで実現する. この物理現象の実験的観測に向けて,韓国の韓国科学技術院(KAIST)の実験・理論グループと国際共同研究を進めている.KAISTのグループとは研究打ち合わせを重ね,2024年度前期には論文を学術誌に投稿する予定である.まだ未発表の内容のため,これ以上の記載は差し控える.
また,この問題に関連して,整数の渦スキルミオンの基本的な挙動を調べるために,慣性質量(渦質量)をもつ量子渦の挙動について理論的な解析を行った.渦質量の問題は超流動に関する長年の未解決問題である.近年の冷却原子気体の実験技術の向上により,この効果を検証可能である.本研究ではこの効果を最大限引き出す方法を提案すると共に,既存の実験結果から渦質量を定量的に検証できることを明らかにした.得られた成果については2023年度末の学会で既に発表しており,2024年度前期には論文を学術誌に投稿予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
スピン1ボース・アインシュタイン凝縮体の強磁性におけるスキルミオンの理論予言が,本科研費研究の実施期間中に実験的検証が行えるようになるとは当初は思いもよらなかった.スキルミオンは素粒子物理の分野に由来する概念だが,物性物理の分野にも幅広く適用されている.古くは1970年代に発見された超流動3He中の織目構造に応用され,最近では新たな科学技術として注目を集めるスピントロニクス分野でも関心が高まっている.もし,予言された新種のスキルミオンが実験的に確かめられれば,物理業界に広く大きなインパクトを与えるであろう.この問題をきっかけに韓国のKAISTのグループと新たな共同研究も始まった.このように課題[II]に重点を置いたため,課題[I]と[III]については進展はあまりないが,総合的に判断すると想定以上の成果が得らえたと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
スピン1ボース・アインシュタイン凝縮体の強磁性相におけるスキルミオンの相図を解明する.それと同時にスキルミオンのダイナミクスについて渦質量の効果についても理論研究を実施する.
課題[II]を優先したことで2023年度にやり残した課題[I]と[III]について研究を再開する.課題[III]については,海外の研究者と共同で実施しているため,相手先に直接渡航して研究を加速させる.課題[I]については,2023年度の途中で中断した数値解析を再開させ,ポーラー相における外部回転下の渦格子構造の相図を作成する.
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