2020 Fiscal Year Annual Research Report
電場印加光電子分光による強相関電子系の非平衡状態の解明
Project/Area Number |
20H01861
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 鉄平 京都大学, 人間・環境学研究科, 教授 (10376600)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 光電子分光 / 強相関電子系 / モット転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
強相関電子系の電気伝導には、非線形伝導や電気抵抗スイッチング現象、電荷密度波の並進運動など、古典的な輸送現象の枠組みを超えた新奇な現象が数多く観測されている。しかし、それらの機構は明らかになっていない。その中で、ルテニウム酸化物は小さい臨界電場で絶縁体-金属転移を示し、直流電場による物性を示し注目を集めてきた。本研究課題では、強相関電子状態に電流を流した非平衡電子状態の知見を深めることを目的として、電場印加下の電子状態を光電子分光により観測し、新奇な伝導現象の解明を試みる。 令和2年度は電場印加光電子分光の技術開発のために、これまでに得られていた電場印加下のルテニウム酸化物Ca2RuO4のX線吸収分光のデータを解析し、直流電流による温度上昇と電場がもたらす電子状態の変化を区別するため、測定試料と参照試料を用いた表面温度を見積もる方法の検討を行った。 非線形伝導の特徴を持つ強相関電子系について光電子分光による電子状態の観測を行った。金属絶縁体転移を起こすCa2-xSrxRuO4は0.0< x < 0.2において構造相転移を伴って低温で反強磁性モット絶縁体に転移する。角度分解光電子分光による観測の結果、転移点以下の絶縁相においても金属的なフェルミ面が観測された。さらに硬X線光電子分光により、電子状態の深さ依存性を調べ、表面は金属状態でバルクは絶縁体状態であることを明らかにした。この結果は表面において結晶構造の緩和が起きていることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍の影響で光電子分光用のクライオスタットの導入は次年度に繰り越された。また、コロナ禍により放射光施設の共同利用が半年間止まっていたが、後半から利用が再開され、ルテニウム酸化物の電子状態について新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度には光電子分光用のクライオスタットを導入し、試料回りの設計を進める。Ca2-xSrxRuO4の表面金属状態については、第一原理計算も行い、準粒子構造の特徴の理解を深める。ルテニウム酸化物以外の非線形伝導の特徴を持つ強相関電子系についても電子構造の調査を進める。
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Research Products
(1 results)