2020 Fiscal Year Annual Research Report
極弱相互作用を持つ軽い新粒子の描く新宇宙描像とその実験的検証
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20H01894
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 史宜 東北大学, 理学研究科, 教授 (60503878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石渡 弘治 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40754271)
北嶋 直弥 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50737955)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 極弱粒子 / ブラックホール / インフレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質直接探索実験のXENON1T実験において,電子反跳イベントに関して既知の背景事象では説明できない超過現象が見つかったという報告が2020年6月にあった。高橋は,この超過現象が2-3 keVの質量を持つアクシオンダークマターとして解釈が可能であることを世界に先駆けて論文として発表した。とくに,このようなkeV質量のアクシオンダークマターが宇宙のX線観測と無矛盾であるためには,光子との結合を著しく抑制する必要があり,アノマリーを持たないアクシオンが強く示唆される。アノマリーを持たない場合でもthreshold correctionのために電子質量とアクシオン質量の比で抑制された結合を持つため,keV程度のX線輝線を予言する。また白色矮星や赤色巨星に関する冷却異常も同時に説明可能であることを示した。更にこのアクシオンがインフレーションを引き起こした可能性についても検討した。石渡は、CTA実験が計画している矮小楕円体銀河観測に着目し、この観測におけるダークマター検出可能性を再評価した。その結果、ダークマターの有力候補の一つであるウィーノ粒子が検出可能であることを示した。北嶋と高橋は極弱粒子の代表例であるQCDアクシオンがダークマターとなるシナリオにおいて、Witten効果により原始ブラックホールが形成される可能性を指摘した。また、北嶋はアクシオンの自己相互作用による共鳴現象の解析や、アクシオンとhidden photonの共鳴による重力波生成に関する解析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
XENON1T実験において,電子反跳イベントに関して既知の背景事象では説明できない超過現象が見つかったという報告が2020年6月にあった。高橋が発表した2-3 keVの質量を持つアクシオンダークマターとしての解釈に関する論文は,Physical Review Lettersに出版され,Editors' SuggestionおよびFeatured in Physicsに選ばれた。さらに本論文は既に80回以上も引用されるなど既に国際的に広く認知されるなど卓越した成果をあげることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
極弱粒子に関する研究は当初の計画以上に進展している。また本科研費において研究員を一名雇用することになり,研究が一層加速することになる。高橋は研究を総括するとともに,その研究員の得意とする電弱理論の拡張と極弱粒子との関係,その宇宙論的含意について研究をすすめていく。石渡は、固体中アクシオンを用いたアクシオンダークマター探索への応用を目指し、固体中アクシオンの物理的性質を理論面から明らかにする。それを基盤に、アクシオンダークマター検出に効果的な現実的な物質を見出す。北嶋はアクシオンとhidden photonが相互作用する系において、初期宇宙における宇宙論的進化を格子シミュレーションを用いて詳細に解析する。特にアクシオンとhidden photonの結合が強い場合について、アクシオンダークマター残存量を定量的に評価する。
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Research Products
(24 results)