2022 Fiscal Year Annual Research Report
極弱相互作用を持つ軽い新粒子の描く新宇宙描像とその実験的検証
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20H01894
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 史宜 東北大学, 理学研究科, 教授 (60503878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石渡 弘治 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40754271)
北嶋 直弥 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50737955)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 極弱粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
石渡は、先行研究を拡張し磁性相転移境界における絶縁体中アクシオン質量の理論予言値を与えた。またアクシオン相互作用が与えうる曲率ゆらぎから、現在のハロー構造への影響を定量的に評価した。北嶋は極弱粒子の一つであるダークフォトンに着目し、特に宇宙ひもから生成される可能性を明らかにした。また、観測的シグナルである重力波のスペクトルを算出し、将来における観測可能性を明らかにした。高橋は電磁相互作用に関してアノマリー的結合を持たないアクシオンがダークマターとなるシナリオに着目し、それが電子の閾値補正による結合を通じて光子に崩壊する過程による制限を導出した。とくに、これまで見逃されていたヒッグス多重項との混合による新たなアクシオン-光子結合による寄与を発見した。また高橋と北嶋はインフレーション中に生成されたスケール不変な揺らぎを初期値に持つドメインウォールに着目し、従来信じられていたのとは大きく異なり、population biasに対してこのようなドメインウォールが極めて安定であることを示した。またアクシオンがこのようなインフレーション揺らぎ由来によるドメインウォールを形成した場合、宇宙複屈折の非等方性分に特徴的なシグナルを予言することを見いだした。将来のCMB観測であるLiteBIRDやCMB-S4によってこの予言は十分に検証可能である。また高橋は一次相転移によってアクシオンダークマターが生成する新たなシナリオを発表し、従来よりも遥かに広いパラメター領域でアクシオンがダークマターとなりうることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アクシオンやダークフォトンといった極弱粒子の有力な候補に関して、その新たな生成機構を複数提唱したり、磁性相転移境界における絶縁体中アクシオン質量の理論予言値を与えるなど、順調に研究成果をあげている。またドメインウォールの安定性という、これまで多くの文献で調べられてきた重要なテーマに関して、インフレーション起源由来の揺らぎの場合には従来の理解とは大きく異なり、非常に安定なネットワークを構成することを発見した。これによってドメインウォールが与える宇宙論的影響は大きく異なることになり、非常にインパクトの大きい成果と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
石渡、小スケールにおいてアクシオン相互作用が与える現実的な曲率ゆらぎを考え、そのゆらぎをソースとするハロー進化を解析する。その解析を元に現在のハロー構造の観測データと比較し、初期宇宙におけるアクシオンの性質への制限を与える。北嶋はダークフォトンを生成する宇宙ひものダイナミクスに関して、より精緻化されたシミュレーションを行い、特にスケーリング則を検証する。その上で、ダークフォトンの残存量及び放出される重力波の生成量をより正確に算出する。高橋はkeVスケールの質量をもつアクシオンに関して、標準理論ヒッグスを含む拡張ヒッグスセクターから必然的に生成される量を求め、それが与える観測実験的制限を明らかにする。これによりkeVスケールの質量を持つアクシオンがダークマターとなりうるパラメター領域を明らかにする、
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Research Products
(25 results)