2020 Fiscal Year Annual Research Report
Theoretical study on the search for the weak-charged thermal dark matter
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20H01895
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 重貴 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 教授 (00451625)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白井 智 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任助教 (10784499)
林 航平 一関工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (20771207)
Binder Tobias 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (30847009)
久野 純治 名古屋大学, 素粒子宇宙起源研究所, 教授 (60300670)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 暗黒物質 / 直接探査 / 間接探査 / 加速器探査 / 暗黒物質分布評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
松本は林とともに、弱電荷を持つ暗黒物質の間接探査において、我々の銀河に付随する矮小楕円体銀河のガンマ線観測は重要な役割を果たすことに注目し、新たに構築したアルゴリズムを用いて、ドラコ、スカルプター、ウルサ・マイナー矮小楕円体銀河のJ因子を、その誤差も含め系統的に評価した。更に林は、J因子を決定するために重要な銀河系矮小銀河の暗黒物質密度分布について、軸対称系を仮定し推定を行った。その結果、現時点で最新の観測データを用いて解析を行ったところ、矮小銀河の暗黒物質密度分布には多様性があることを明らかにした。白井は松本とともに、ハドロンコライダーで弱電荷を持つ粒子の間接的な検出方法を提案したことを踏まえ、このシグナルについて、高次の補正効果や非摂動的効果まで含めた詳細な理論計算を行ない、より精度の高い理論予言を行なった。久野は、弱電荷を持つスピン1の粒子を暗黒物質として予言する繰り込み可能な素粒子模型を構築した。本模型は、弱電荷を持つスピン1の粒子を予言する余剰次元模型の良いトイモデルとなっている。暗黒物質直接探索などからの制限で許される領域を明らかにするとともに、熱的残存仮説のもとで期待される暗黒物質の質量を評価した。また、ニュートリノ質量をループダイアグラムによって導くストジェニック模型を、弱電荷を持つ暗黒物質を予言するように拡張した場合の、電子の電気双極子能率を評価した。トビアスは、有限温度中の暗黒物質の束縛状態生成について研究を進めた。特に、本生成過程を開放系の粒子力学として取り扱うことで、有限温度や(零温度における高次補正)における、束縛状態生成を伴う(弱電荷を持つ)暗黒物質の残存量計算(凍結機構)において、赤外及びコリニアー特異点の取り扱いが対消滅断面積の評価に重要な役割を果たすことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の初年度の活動として、今後に向けて非常によい滑り出しができた。弱電荷を持つ熱的暗黒物質の残存量評価、加速器、および非加速器(宇宙観測)におけるシグナル評価につながる重要な成果を出すことができ、また暗黒物質の分布評価においても大きな進展を見た。更に、まだ包括的な研究が進んでいないフェルミオン暗黒物質以外の候補についても研究をスタートさせ、成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度(初年度)の研究を引き続き行いさらに発展させることに加え、更に新しい研究も開始する。前者研究の一例としては、量子論的効果を用いた、高エネルギー加速器における間接的暗黒物質探査の研究が挙げられる。レプトン対生成へのDrell-Yan過程に注目し、その過程の重心系のエネルギーが暗黒物質の閾値付近になると現れる特異な断面積の振る舞いに対する補正を、暗黒物質間に働く長距離力に伴う非摂動効果を取り入れ計算を行う。また他の例としては、天体観測を用いた暗黒物質の間接検出の研究が挙げられる。本年度は、再度矮小楕円体銀河に注目し、特にそのメンバー星の分布不定性が、矮小楕円体における暗黒物質分布推定における不定性にどのような影響を与えるのかについて定量的な評価を行う。また、従来の手法を用いた暗黒物質分布推定を超え、機械学習を用いた推定アルゴリズムの開発を開始する。また昨年度において、弱電荷を持つ暗黒物質の熱的残存量の計算について、その基礎的な機構についての理解が進んだため、本年度はそれをシンプルな例(例えば弱電荷1を持つマヨラナ・フェルミオン暗黒物質)に適用し、その効果についての議論を始める。一方、新しい研究として、これまで弱電荷を持つフェルミオン暗黒物質の研究を主に行ってきたが、それを拡張し、暗黒物質のスピンがスカラーの場合とベクトルの場合の両方についての研究を開始する。スカラーの場合は、電弱相互作用による長距離力の効果(Sommerfeld効果)を踏まえた計算を、ベクトルの場合はその(暗黒物質の)質量生成機構を踏まえた具体的な模型構築について研究を進める予定である。また、これら様々なスピンを持つ暗黒物質候補に対して、現状の、そして近い将来の地下実験(暗黒物質の直接探査)の科学的意義と具体的な役割について定量的に明らかにする予定である。
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Research Products
(24 results)