2021 Fiscal Year Annual Research Report
ユーラシア大陸東縁部,背弧~超背弧域上部マントルの温度・含水量履歴の解読
Project/Area Number |
20H02010
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
柵山 徹也 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (80553081)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 健二 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30420491)
羽生 毅 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 海域地震火山部門(火山・地球内部研究センター), グループリーダー (50359197)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 玄武岩 / 停滞スラブ / 上部マントル / 揮発性成分 / マグマ生成過程 / 超背弧域 / ユーラシア大陸東縁部 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国地方,隱岐島後島において第四紀玄武岩試料を中心に試料採取を行った.採取した試料に対して,偏光顕微鏡を用いた岩石薄片観察・鉱物同定,蛍光X線分析装置(XRF)を用いた全岩化学組成分析を行った.採取した試料中でも変質の程度が小さく比較的未分化に近い試料をさらに選別し,鮮新世以降のマグマ生成条件・起源マントル物質の時間変化を検証した.先行研究で報告されている試料と同様の全岩化学組成を有する試料を採取できたことから,次年度以降に電子線マイクロプローブ(EPMA)を用いた鉱物化学組成分析を行うことで,従来行われていなかったマグマ含水量の時間変化を明らかにする. 五島列島福江島富江地域で採取していた玄武岩試料に関して, XRFを用いた全岩化学組成分析,偏光顕微鏡を用いた岩石薄片観察・鉱物同定,EPMAを用いた鉱物化学組成分析を行った.まだ推定精度に議論の余地があるが,マグマ含水量は概ね約2重量%,融解条件は1.5GPa, 1250℃程度と見積もられた. 神鍋火山スコリア丘から採取したスコリア試料から,高電圧パルス選択性粉砕装置を用いてかんらん石斑晶の分離を行い,かんらん石に含まれるメルト包有物の分析に向けたメルト包有物を含むかんらん石の抽出とそれらの研磨作業を行った.次年度に二次イオン試料分析装置(SIMS)を用いた揮発成分分析,レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)を用いた微量元素・同位体比分析の準備がほぼ整った. 丹後半島に分布する第三紀玄武岩試料(約18-21 Ma)の採取を追加で行い,ピクライト質玄武岩と同時代に噴出した,やや分化した玄武岩試料を採取した.XRFを用いた全岩化学組成分析,偏光顕微鏡を用いた岩石薄片観察・鉱物同定を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルスによる出入国制限の影響により,当初予定していた中国・大同や韓国・済州島での試料採取は未だ達成できていない一方で,北西九州や中国地方における研究,既に採取済みの中国の玄武岩試料についての分析作業は概ね順調に進んでいる.中国東北部五大連池の採取済み試料に関しては,斑晶中メルト包有物の揮発性成分量,微量元素,同位体比分析まで順調に終了し,興味深い結果が得られている.九州北西部五島列島福江島の試料は,XRFおよびEPMA分析を行い,マグマ初期含水量,マントル融解条件の推定を完了し,五島列島のマグマ活動の原因として全く新しいモデルを考案している.今後そのモデルのさらなる検証を行うため,他機関との共同研究により,全岩微量元素組成分析,同位体比分析を行う.中国地方の試料については,西から女亀,横田,隠岐島後,黒岩,神鍋周辺,丹後半島と順調に試料採取,各種分析を行っている.神鍋火山からはメルト包有物分析に適した高発泡度スコリア試料が採取できたことから,メルト包有物の揮発性成分量分析に向けて着実に作業が進行している.女亀,横田,黒岩,神鍋周辺においては全岩化学組成・斑晶化学組成にもとづいたマグマ含水量,マントル融解条件の推定,マントル起源物質の推定までは終了している.隱岐島後,丹後半島については,試料採取をすでに行い,今後はEPMA分析を行うことで,マントル融解条件の推定までできる段階にある.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は試料未採取地域における試料採取や,採取済み試料の各種分析作業を継続するとともに,蓄積されてきた分析結果を集約し,モデルの構築,論文としての公表を進める.隱岐島後島の玄武岩試料については, EPMAによる鉱物化学組成分析を行い,マグマ分化プロセスの解明,マグマ含水量の推定,マントル融解条件の推定を行う.さらに,新鮮かつ未分化に近い試料について,微量元素組成,同位体組成分析を他機関と共同で行い,マントル起源物質の変遷についても明らかにしたい.神鍋スコリア試料については,メルト包有物の抽出・研磨作業を継続し,SIMSを用いてメルト包有物中の水・二酸化炭素・ハロゲン元素濃度,レーザアブレーション誘導結合プラズマ質量分析装置(LA-ICP-MS)を用いて,微量元素濃度,Pb同位体比測定を行う.丹後半島の第三紀玄武岩試料については,追加の試料採取,XRF,EPMA分析を継続し,マグマ含水量,マントル融解条件や初期マントル含水量の推定を目指す.計画では令和3年度に採取予定であった韓国・済州島の玄武岩試料の採取を,令和4年度に行うべく,現地関係者との調整を令和3年度から再開している.済州島での試料採取ができた場合は,XRFによる全岩化学組成分析,EPMAによる鉱物化学組成分析に加え,新鮮で未分化に近く高発泡度のスコリア試料からかんらん石斑晶の分離を行い,斑晶に含まれるメルト包有物の揮発性成分量分析に向けた前処理作業を行う.すでに採取済みで各種分析をほぼ終了している,中国東北部五大連池,中国地方の横田や黒岩等のデータと照らし合わせながら,ユーラシア東縁部新生代後期玄武岩活動をマントルの変遷について統一的に解釈するモデルの構築を目指す.
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Research Products
(2 results)