2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of structural analysis method for multi-component nanocomposites using deuterated polymer
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20H02023
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
前田 知貴 茨城大学, フロンティア応用原子科学研究センター, 助教 (00754730)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀田 篤 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30407142)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 重水素化ポリマ / ナノ複合材料 / 中性子散乱 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ポリマ分子鎖内の水素(H)を重水素(D)に置換した重水素化ポリマに着目し、中性子散乱におけるコントラストの制御により、多成分系ナノ複合材料の構造解析の実現に向けた基盤研究を実施している。具体的な研究内容は、ポリマ分子鎖内のHをDに置換した重水素化ポリマを合成し、この重水素化ポリマを用いてナノ複合材料を作製し、中性子散乱による構造解析を実施することである。 当該年度においては、(1)重水素化モノマ(Dモノマ)の重合反応における反応条件の最適化および(2)飽和炭化水素の重水素化反応(H/D交換反応)における反応条件の最適化を行った。 はじめに、Dモノマを購入し、Dモノマの重合反応を実施し、その時間変化を評価した。あわせて、Hから構成されるモノマ(Hモノマ)の重合反応も実施した。重合反応には、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合法を用いた。結果として、Hモノマの重合反応により最適化された反応条件を用いることで、Dモノマの重合反応は実施可能であり、Hモノマの重合反応で得られたポリマとDモノマの重合反応で得られた重水素化ポリマの分子量は同程度であることが確認された。 つづいて、最も単純な構造のポリマーであるポリエチレン(PE)に着目し、PEと同一の構造で、分子量の低い化合物を用いて、H/D交換反応を実施し、その重水素化率(DとHの総数に対するDの割合)を評価した。低分子化合物には、ペンタデカンを用いた。水素雰囲気下(圧力:0.2MPa)において、ロジウム/活性炭素を触媒とし、重水をD源として、H/D交換反応を実施した。重水素化率の評価には、フーリエ変換赤外分光法および中性子散乱を用いた。結果として、重水素化率62%のペンタデカン約2 mLを1回の反応で得ることができた。以上より、重水素化ポリマの合成に向けて、重合反応およびH/D交換反応の反応条件を最適化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ポリマ分子鎖内のHをDに置換した重水素化ポリマを合成し、この重水素化ポリマを用いてナノ複合材料を作製し、中性子散乱による構造解析を実施するにあたり、研究計画目標においては、重水素化ポリマの合成に向けて、重合反応およびH/D交換反応の反応条件を最適化すること、としていた。そこで、購入可能な重水素化モノマ(Dモノマ)を用いて、Dモノマの重合反応を実施し、反応条件の最適化を実施してきた。その結果、同一の化学構造を有するHモノマの重合反応の反応条件が適用可能であることがわかった。さらに進んで、Hポリマから重水素化ポリマを合成する方法の実現可能性を検討するために、飽和炭化水素の低分子化合物であるペンタデカンを用いて、H/D交換反応を実施し、反応条件の最適化を実施してきた。その結果、水素圧力の制御により、重水素化率が62%程度まで上昇することがわかった。これより、重水素化モノマを重合する方法、または、H/D交換反応によりHポリマから重水素化ポリマを合成する方法により、重水素化ポリマを得ることが可能であることがわかった。このことより、本研究の第1段階である「重水素化ポリマの合成」が複数の方法で実現可能となり、その最適条件を見出せたことから、第2段階である「ナノ複合材料の作製」において必要とされる重水素化ポリマの種類の多様化の実現可能性が高まったといえる。以上より、重水素化ポリマの合成およびナノ複合材料の作製に向けて、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これより、重水素化率が制御された重水素化ポリマ(Dポリマ)の合成に取り組み、ナノ複合材料の作製を見据えて、モノマおよびポリマの種類を拡大することを目指していく。具体的には、高温・高圧下において、分子内の軽水素(H)を重水素(D)に交換する反応(H/D交換反応)により、重水素化率が制御されたDポリマの合成を試みる。また、ナノ複合材料の作製を見据えて、Dポリマ単体の物性を評価する。さらに、ナノ複合材料の中性子散乱による構造解析を見据えて、Dポリマ単体の中性子散乱測定を実施する。 重水素化率が制御されたDポリマの合成では、(1)HモノマからDモノマを合成し、HモノマおよびDモノマを重合することでDポリマを合成する方法、(2)HポリマからDポリマを直接合成する方法、の2つ方法を用いる。方法(1)では、H/D交換反応により、HモノマからDモノマを合成する。このDモノマとHモノマを混合し、重合することで、重水素化率が制御されたDポリマを合成する。重合反応には、精密ラジカル重合法(ATRP法、RAFT重合法など)を用いる。DモノマとHモノマの混合比、反応温度、反応時間などを変化させるとともに、重合過程を追跡することで、重水素化率の制御を試みる。方法(2)では、H/D交換反応により、HポリマからDポリマを直接合成する。ポリマーには、基本的な骨格を有するポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)などを用いる。触媒量、反応温度、反応時間を変化させることで、重水素化率の制御を試みる。 さらに、重水素化率が制御されたDポリマに対して、熱物性、力学物性、溶媒への溶解性などの物性評価や、中性子散乱による構造評価を実施することで、ナノ複合材料の物性および構造解析を実施する際に必要となる基礎的なデータを取得する。
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Research Products
(5 results)