2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of Radar Inversion Technologies for Small-Scale Weather Disturbances
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20H02166
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西村 耕司 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (60455475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉川 栄一 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 航空技術部門, 主任研究開発員 (70619395)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 大気レーダー / 逆問題 / 干渉計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の根幹部分となる干渉計へのインバージョン法の導入を行い,問題の定式化と数値解法アルゴリズムの導出を行なった.このアルゴリズムはパラメトリックモデルに基づくものであるが,パラメータ数が多いこと及び順問題の計算コストが非常に大きいことに起因し,正面突破は大変困難である.ここで問題の特徴を詳細に分析し,問題の次元を圧縮する高精度近似法を発見し,これに基づいて実用的時間内に解くことができる高速アルゴリズムの開発に成功した.数値シミュレーションによる評価を行い,得られる推定値が非常に高い精度を有していることが示された. 大型大気レーダーでは共通の課題となっている送受信スイッチングによる1500m以下の観測空白領域問題の解消のため,外付けアンテナおよび外付けデジタル受信機の利用による低高度観測技術の開発を開始した.必要となるアナログ回路(アンテナ,フィルター,アンプなど)部分,およびデジタル受信機について開発を概ね完了した. これと並行して,付加アンテナの受信信号を遅延することによりレーダー本体の備える多チャンネル受信系でデータ取得を行う手法も新たに考案した.これにより多チャンネル受信機を具備するレーダーにおいては外付け受信機を付加することなく低高度観測を実現できるようになり,メンテナンスコストが下がりデータハンドリングも容易となる.本研究では10μsの長時間ディレイの開発に成功し試験の進行中である. また,低高度観測では,特に大開口アンテナアレイの場合近傍界における観測となり,いわゆるビームが構成されないため観測により得られるスペクトルの評価が難しい.スペクトル観測理論を低高度域に適用した厳密解を求める手法を確立し,従来法となるビームパターンによる評価との誤差評価も実施した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の骨格となるレーダー干渉計インバージョン法の研究については,上述概要で述べた内容に加えて以下の通り進捗している.実観測による干渉計インバージョンの検証についても進んでおり,検証の第一段階として京都大学MUレーダーによる観測を実施した.MUレーダーは50MHz帯というウィンドプロファイラーとしては極めて低い周波数を利用しており,波長が長いことによる特有の非等方性散乱が観測されることがよく知られているが,ここまでの定式化では非等方性についてモデル化していないため,やはりこれに起因する推定誤差が見られた.今後VHF帯用の修正モデルを検討する必要がある. また,この検討の中で,インバージョン法の適用においてはアンテナの空間的感度特性が正確に既知であることが大変重要であることが明らかとなった.小型のアンテナでは暗室を用いたパターンの実測,校正が一般に行われるが,大型レーダーでは実測は極めて困難である.本研究では,新たな課題としてドローンを用いた実測システムの開発を並行して検討することとした. 外付けアンテナを用いた低高度観測システムの開発とそこでのインバージョン法の実現については当初計画以上に進捗している.大型レーダーでは送受信切り替えのため通常1500m程度以下の高度について観測ができないが,外付けアンテナ系統と外付けデジタル受信機によりデータを取得する準備を進めていたが,これとは別途,光電・電光変換器と光ファイバーを用いたディレイラインを開発し,レーダー本体の受信機を用いた低高度観測システムの開発に成功した.この手法は新規にデジタル受信機を開発するよりも導入のハードルが低く,すでに予備の受信チャンネルを具備するレーダー装置であればこちらの方が実装が遥かに容易である.すでに初期観測は実施済みで現在解析中である.
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Strategy for Future Research Activity |
低高度観測技術の開発については,MUレーダーにおいて試験系を構成し,初期観測は実施済みで,本年度(R4年度)中には実データにより地上300m付近からの風速プロファイルの取得まで可能となる見込みである. また,干渉計インバージョンの開発については以下のように進める.理論面からは,VHF帯対応のための非等方性散乱のモデル化を試みる.また,非等方性散乱の数値シミュレーションにおける再現を行い,実測結果との定量的比較を行い精度検証につなげる.通常ウィンドプロファイラーで用いられるUHF以上の周波数帯では非等方性散乱はほとんど観測されないため問題とならない.本研究のゴールとしてはL帯での実装を想定しており,これに相当するNICTのウィンドプロファイラーによる試験を進め,等方性仮定の成立する条件のもとでの実測実験を進める.NICTのアンテナはやや特殊な構造をしており,これの特性評価についての検討も行う. 一般論としてインバージョンの適用のためには極めて正確な観測系のモデリングが必要となるため,理論値と実際が一致しているかの検証はかかせない.派生課題としてドローンによるアンテナ特性の実測を進めているが,最も問題となるのは空間位置の同定と10psオーダーのタイミング同期である.本年度はドローンの実機を導入し,各種同期手法の検討と初期実験を進める. 予想外の事態として,昨年度に従来維持してきた試験測器の一部(信号発生器)の深刻な故障が発生した.これにより装置開発に大きな支障が出ており,今年度予算において修理,あるいは新規導入を検討するため,一部の予算(アンテナ,受信機等ハードウェア予算の一部)の振替えにより捻出する予定である.
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Research Products
(34 results)
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[Presentation] 大型大気レーダーを中心とした観測展開から探る大気大循環変動2021
Author(s)
堤 雅基, 佐藤 薫, 佐藤 亨, 中村卓司, 齋藤昭則, 冨川喜弘, 西村耕司, 高麗正史, 橋本大志, 江尻省, 鈴木秀彦
Organizer
中間圏・熱圏・電離圏 (MTI) 研究集会
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[Presentation] Current EISCAT and next EISCAT_3D database2020
Author(s)
小川 泰信, 野澤 悟徳, 田中 良昌, 橋本 大志, 大山 伸一郎, 津田 卓雄, 藤原 均, 西村 耕司, 宮岡 宏, 中村 卓司, 藤井 良一, Haggstrom Ingemar, Heinselman Craig
Organizer
SGEPSS
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