2023 Fiscal Year Annual Research Report
力学的エネルギー解析に基づく古材および生物劣化材の木材耐久性評価
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20H02296
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山崎 真理子 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (70346170)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 拓郎 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (00335225)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 木材 / 力学性能 / 生物劣化 / 力学的耐久性 / 古材 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,木材の耐久性を検討するために,表1に示す実験群(古材・熱処理材(人為的な古材モデル)・生物劣化材・複合劣化材を設定し,以下に示す2種 類の研究を行う計画である.(A)力学的耐久性評価:劣化処理剤の疲労試験および衝撃試験とエネルギー解析(木材バルクの耐久性試験)①木材の繊維の引き抜きが起こる曲げ試験(建築物 のはり材に作用する負荷様式)と②細胞壁内の空洞を圧縮する部分横圧縮試験(接合部に作用する負荷様式)である.これらについて,下記の研究計画を立てた.・静的試験ならびに疲労試験を実施し,疲労試験より得られたサイクル毎の応力-ひずみ曲線より,剛性・残存ひずみ・ひずみエネルギーの経時変化を解析 すること.・両試験から各種劣化によるエネルギー吸収能の低下量を求めること.・これらより,古材化によるエネルギー吸収能の低下を定量評価すること.・ 残存エネルギー吸収能と合わせて耐久性の評価法を導出すること.・さらに,これに及ぼす生物劣化の影響を明らかにすること.これまでに,古材に関する予定の実験を終え、熱処理(曲げ疲労)および強制腐朽(部分横圧縮)について実験を開始した。いずれも順調に遂行している.(B)劣化/経年使用による力学的変性の機構解明:細胞壁内のセルロースの力学挙動の把握(内部構造の力学応答):この課題については次の研究段階を予定した.・測定装置の改良と細胞壁2次壁各層の測定方法の確認・古材実験・熱処理実験.これまでに,実験を終了し,現在解析を行っており,順調に進んでいる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定の研究期間をあと1年としており、実験はほぼ順調に進んでいる。強制腐朽については、初期劣化材の曲げ疲労試験も開始している。初期劣化の試験体調整にやや課題を残したが、この点については来年度改良試験を行う予定であり、供試材の準備は終えている。また、細胞壁内のセルロース鎖の力学挙動について,新材,古材,熱処理材の実験を終了し、解析を進めている.単軸応力下におけるセルロース(004)面の 力学挙動を解析したところ,古材の特徴は,新材と比べて引張と圧縮の両荷重に対して遅延した応答を示す点にあることを見出した.圧縮荷重では,セルロースは最大ひずみが増加し,セルロースの配向角の変動が有意に増加したことから,座屈的な蛇行挙動を示す可能性が示唆された。これらの結果は,木材の経年変化 による細胞壁中のヘミセルロース含量の減少に基づいて説明することができる。すなわち,細胞壁中の非晶質物質が,細胞壁レベルで木材の力学的挙動に影響を 及ぼしていることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度、予定の研究期間を終了する。実験としては初期劣化材の曲げ疲労試験を行い、劣化状況が力学挙動に及ぼす影響を詳細に検討する予定である。細胞壁中のセルロースの力学挙動について、予定の試験を終了しており、解析を進めている。これらの実験研究の全体を総括し、経年使用された木材の力学的耐久性とその発現機構について知見を考察する。
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