2021 Fiscal Year Annual Research Report
二元系合金融体の表面張力に及ぼす組成および酸素吸着の影響解明
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20H02453
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
小澤 俊平 千葉工業大学, 工学部, 教授 (80404937)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 表面張力 / 高温融体 / 雰囲気酸素分圧 / 酸素吸着 / 無容器浮遊法 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶接や鋳造等の自由表面を有する高温融体プロセスの最適化や現象解明の為に,表面張力の正確な値が強く求められている.金属融体の表面張力は,雰囲気酸素分圧の影響を受けることが分かってきたが,合金融体において,組成,酸素分圧,温度の影響を同時にパラメータとした測定は無い.また過年度までの研究から,溶鉄の表面張力測定においては,雰囲気ガス種と酸素分圧の影響を明らかにしている.そこで2021年度はこの結果を元に,表面張力とそれに対する酸素吸着の影響が異なる鉄とシリコンの合金を作製し,表面張力に対する温度,組成,酸素吸着の影響を明らかにすることを試みた.なお,シリコン融体の表面張力についての文献値は大きくバラついているため,この再検証も行った. その結果,シリコン融体近傍の酸素分圧が,雰囲気の平均的な酸素分圧に比べて,著しく低下し,それが表面張力測定に影響することを明らかにした.またこの結果を利用して,シリコン融体の表面張力に対する,温度と酸素活量の影響を,Szyszkowskiモデルによって数式化した.さらに,従来の報告値のバラツキは,容器からの試料汚染の可能性が高いことを示した. また,溶鉄の表面張力は,不活性ガス雰囲気においては酸素吸着によって急激に低下することが明らかとなっているが,Siを添加するとその影響が小さくなることを明らかにした.またSi添加量が多いほど,表面張力が低くなることを明らかにした. さらに,Fe-Si合金融体の表面張力は,組成に依らず負の温度係数を示したが,金属間化合物を生成するFe-50at%Siにおいて,その絶対値が他の組成より小さくなった.これは,液相状態においてもFe-Si間の強力な相互作用が残存し,それが表面張力に影響を与えている可能性を示唆するものであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では,Fe-Si合金融体の表面張力に対する酸素吸着と温度の影響を明らかにすることを主な目的としていたが,これを十分に達成できた.さらに,表面張力と組成の関係において,金属間化合物組成付近における不連続を確認し,その原因についても考察した.さらに,当初計画には無かったシリコンの表面張力についての再検証データも十分に得られたことにより,従来の報告における大きなバラツキの原因を明らかにした.これにより,次年度以降に予定しているFe-Cu合金や,Cu-P合金融体の表面張力測定のための準備が整えられた.
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Strategy for Future Research Activity |
合金融体の表面張力挙動を明らかにするためには,雰囲気からの酸素吸着と試料への酸素溶解の間の平衡を十分に担保する必要がある.試料の種類によっては,短時間ではこの平衡に達しない可能性があることから,これを新たに考慮することを検討する.さらに,申請者がこれまでに築いてきた研究者間のネットワークも利用して,他の手法による測定結果との整合性についても確認し,正確なデータの取得と解釈を行う.
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