2021 Fiscal Year Annual Research Report
有機エレクトロクロミック物質の新展開:近赤外光スイッチによるバイオイメージング
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20H02719
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 孝紀 北海道大学, 理学研究院, 教授 (70202132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石垣 侑祐 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (60776475)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 動的酸化還元 / 近赤外色素 / エレクトロクロミズム / バイオイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に沿った研究実験を実施し、その実績について、”Generation of hydroxyl radical-activatable ratiometric near-infrared bimodal probes for early monitoring of tumor response to therapy.”L. Wu, Y. Ishigaki, W. Zeng, T. Harimoto, B. Yin, Y. Chen, S. Liao, Y. Liu, Y. Sun, X. Zhang, Y. Liu, Y. Liang, P. Sun, T. Suzuki, G. Song, Q. Fan, D. Ye, Nat. Commun. 2021, 12, 6145. [DOI: 10.1038/s41467-021-26380-y (open access)]の論文にて発表した。
上記論文では、生体内のヒドロキシラジカルを選択的に検知してイメージングを行う方法を開拓したものであり、ヘキサアリールブタジエン骨格に、適切なアルキル基の置換したアミノ基を導入した化合物が有効であった。またNIR蛍光によるイメージングに、NIR吸収に由来する光音響分光スペクトルを併用することで、定量性の高い手法として確立できた点は特筆に値する。
一方、物質開発については、ヘキサアリールブタジエンの基本骨格を持ちながらも、酸化還元に際して分子内に反芳香族性骨格であるチエピン、オキセピン骨格が生じることで、よりNIRの長波長部分に吸収をもつ化合物群についての検討を中心に進める計画であった。当該物質の合成には成功しており、今後そのスペクトル特性とイメージング法への応用へ進む段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き、インパクトファクターの高い論文誌(Nature Communications)に研究成果を発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
新規物質開発のために、新たな基本骨格を提案し、DFT計算により、導入するAr基の違いが基本物性に与える影響を推測した後、一連の誘導体の合成が可能なルートの開発と実際の合成を行う。中性状態及び二価陽イオン塩に対するX線構造解析、両者のサイクリックボルタモグラム測定、電気分解によるエレクトロクロミズム特性を調査し、計算で推測された特性との一致度を確認しながら、更なる分子設計へとフィードバックするプロセスが有効である。本年度は、電子授受に際して骨格内に反芳香族性の部分構造が生じることで、近赤外吸収特性の向上を目指した取り組みを実施する。また、これまでは電子授受に際して、中性状態の分子と2価陽イオンとの相互変換が生じる系についての検討を行って きたが、応答挙動の複合化および吸収係数の増大を目指す別系統の研究として、電子移動によって4価陽イオンや6価陽イオンが安定に生成可能な分子の開発を実施する。新規に開発されたNIR有機EMについてのin vivoでの実験は主に、国際共同研究にて実施する計画である。
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